一般社団法人埼玉県建設業協会

トピックス 2018年11月号

関東甲信越ブロック会議
ICT対応への支援
「担い手の確保・育成」など求める

平成30年度関東甲信越地方ブロック会議が10月3日午後3時15分から、東京大手町の経団連会館で開催された。地方ブロックから国土交通省に対し、働き方改革なの実現など必要な9項目の議題を提案し、国交省がこれに対する所見を述べた。
 冒頭、小俣務関東甲信越地方建設業協会長会会長(神奈川県建設業協会会長)は、「地域建設業者の経営状況は好転しておらず、働き方改革を進める環境が整っていない。本日の会議は、国土交通省本省に直接、現状と思いを伝える唯一の場。各県建設業協会の声を受け止め、今後の施策の参考としていただきたい」とあいさつした。
 来賓として、国土交通省の野村正史土地・建設産業局長、五道仁実大臣官房技術審議官、石原康弘関東地方整備局長があいさつ。「今年は災害が多く発生している」と危機感を示すとともに、「国土強靭化のために必要な予算を確保する」と強調。地域建設業の働き方改革を官民協働で進めるため、「意見交換の内容を施策に反映したい」と述べた。
 全国建設業協会の近藤晴貞会長は、「働き方改革実現には、地域建設企業の安定的な経営基盤が必要。そのために必要な事業量を継続的に確保することをお願いする。社会的役割を果たしていくための意見を交換し、官民が一つとなって課題に取り組みたい。有意義な会議となることを期待する」とあいさつした。
 会議で各地方ブロックが国に要望した内容と、これに対する国交省の所見の要旨は次の とおり。

◇公共事業予算増額と安定的・継続的確保、地域建設業の受注機会確保について(千葉県建設業協会)

 地域建設業が将来にわたって、社会的責務を果たし、災害対応空白地帯を生み出さないためには、『改正品確法』の運用指針に謳われている、受注者の適正な利潤が確保され、経営基盤の強化・安定が必要不可欠となります。そこで、以下について要望します。
・社会資本整備に必要な公共事業予算の増額、安定的かつ継続的な確保
・平成30年度予算の早期発注と、国土強靭化対策としての大型補正予算の編成
・平成31年度当初予算における公共事業関係費の大幅増額と、消費増税に対応した景気対策としての特別措置に公共事業関係費を大きく盛り込むこと
・地域建設業の受注機会の確保

《国交省の所見》

 来年度の予算の概算要求では今年度比1.19倍の公共事業費を要求している。今年度の補正予算でも必要な検討を進める。早期発注に関しては、国土交通省の直轄工事が7月までの新規の契約件数は昨年度と比べ400件、約1割の増となっている。地域建設業の受注機会確保については、分離分割発注、地域要件の設定、総合評価での評価などに引き続き取り組んでいく。

◇中央公契連モデルの改正について(長野県建設業協会)

 国や地方公共団体が発注する公共工事における契約価格と予定価格との大きな乖離は、工事目的物の品質低下の懸念に加え、受注企業の経営の圧迫や、下請企業や製品納入業者への影響など、多くの問題を誘発する要因ともなっております。結果として、低入札調査基準価格付近での落札が多くなっている状況を踏まえ、中央公契連モデルについて、以下の事項を要望いたします。 ・低入札価格調査基準価格の算定方法について、一般管理費等の算入率を現行の5.5/10から、現場管理費と同じ9/10に変更する等、さらなる引き上げ ・予定価格の7/10〜9/10の範囲とされている条文の撤廃

《国交省の所見》

 中央公契連モデルの運用については、ベースとなっている国土交通省直轄工事における低入札価格調査制度の実態調査を踏まえ、平成20年以降、これまで計6回の見直しを行っている。今後も公共工事の実態把握に努め、関係機関と調整し、適時・適切な対応を図っていきたい。

◇ICT対応への支援について(埼玉県建設業協会)

 建設業の生産性の向上には、ICTの活用が有効ですが、今後、ICT施工がより小規模な工事に、また、より多様な工種に拡大することが予想される中で、中小企業である地域の建設業がこれに対応できるよう、工事規模や工種に応じたきめ細かな積算基準の設定をお願いします。また、協会では、ICT土工体験講習会やドローン操縦士育成講習会、UAV測量講習会などを開催しておりますが、一人当たりの受講費用が高額であることや、ICT建機等の操作講習の教習所が少ないなどの課題があります。このため、受講費用やICT関連設備投資への助成制度の創設、国土交通省の技術事務所における講習の開催などの施策をお願いします。
 さらに、ICT施工の3Dデータ作成等について、汎用性のあるソフトウェアが開発されることにより、特定のメーカーに限定されず幅広く利用できるようになることも重要と考えております。地域建設業の生産性の向上に向けて、一層のご指導、ご支援をお願いします。

《国交省の所見》

 ICT活用工事を実施する中小企業に対する技術支援としては、工事の中で試行を実施している。具体的には、受注者の希望によりデータの作成等の支援を行うことが可能。安心してICTを活用してもらえる施策を進めており、今後も地域建設業の生産性向上に取り組みたい。補助金・税制についても各機関が実施しているものがあり、活用してもらえるよう周知したい。研修会も各整備局などで実施しており、引き続き支援したい。汎用性の高いソフトの動向にも注視していきたい。

◇インフラ老朽化への対応について(茨城県建設業協会)

 国と地方自治体の既存インフラに係る維持補修・更新需要は今後ますます高まり、メンテナスエキスパートの育成が不可欠です。インフラメンテナンスにおけるICT導入やオープンデータ化の推進、新技術の開発・導入による生産性向上と効率化を積極的に進めていただくともに、地方の建設業者がこうした技術の流れに的確に対応できるよう、ノウハウや情報の積極的な提供とご支援をお願いいたします。また、社会インフラのメンテナンスに関する専門的かつ実践的な知識を有した技術者育成の取り組みに対し、ご支援、ご協力をいただけると大変助かります。

《国交省の所見》

 国土交通省では平成25年を社会資本メンテナンス元年と位置付け、予防保全に基づくメンテナンスサイクルを確立・徹底するとともに、新技術の開発などを推進している。また、産学官民によるインフラメンテナンス国民会議を立ち上げた。これらを通じて、技術者育成に関しても支援に取り組みたい。

◇「地域の守り手」の位置付けについて(栃木県建設業協会)

 国においても、災害等への対応から、地域の建設業を「地域の守り手」と位置付けていますが、その社会的使命を継続していくためには、経営の安定化や担い手の確保が必要不可欠であります。その役割と位置付けをより明確にするとともに、それを支える施策や仕組みが必要であり、以下の様な柔軟かつ効果的な運用の取組をお願いいたします。
・適正な利潤を踏まえた安定的な事業量の確保
・「地域の守り手」の継続を考慮した発注方法
・建設協同組合等の活用

《国交省の所見》

 安定的・持続的な公共投資の確保に努める。災害時の重要インフラの確保について、ソフト・ハードの両面からの緊急点検に着手しており、この結果を踏まえ緊急対策に取り組む。発注方式では、分離分割、地域要件の設定、総合評価制度における評価などで地域建設業に配慮している。地方公共団体に対しても品確法に基づいた取組が行われるよう、会議の場などを通じて周知に努める。

◇受注者側から見た週休2日制と視える化工程について(群馬県建設業協会)

 週休2日制をはじめとする働き方改革の一環として、群馬県では今年度、発注者側と受注者側が共同で「視える化工程表」を作成し、必要な工期をしっかり取ることや、発注者による段階確認・中間検査の日程等の確認、また工事実施の問題点やリスクの共有などを目的とした取組を試行することとなっております。このような工程表を受発注者が共有することによって実効が上がることになると期待しているところです。ついては、国を始めとした発注機関が、週休2日制を確実にする取組を行っていただけますようお願いいたします。

《国交省の所見》

 昨年から工事の準備期間、後片付け期間の見直し、適正な工期を算定するシステムの導入などに取り組んでいる。関係省庁連絡会議では、「適正な工期設定等のためのガイドライン」を今年7月に改訂している。民間発注者を含めて周知したい。

◇建設業における「担い手の確保・育成」に資する施策について(山梨県建設業協会)

 「担い手の確保・育成」に資する施策として、以下について要望・提案します。
・「週休二日制」の導入を円滑に進めるため、労務単価の更なるアップに加え、これにより技能者・労務者が収入減となった場合、現場管理費の経費率の嵩上げ等による休暇中の給与補償など、賃金補償制度の導入を図ること
・建設業の魅力度アップのため、学校の夏休み期間などに合わせた「長期連続休暇制度」の導入を図ること。この間についても、上記同様、賃金補償制度の導入を図ること
・技術者の育成のため、協会等が実施する研修等への助成金や負担金制度の創設・改善及び育成・教育機関の充実を図ること

《国交省の所見》

 労務単価は平成24年以降6度の見直しにより上昇している。平成29年度の公共工事の労務費調査から週休2日工事の実態を調査し、通常より約5%上回ることが分かり、週休2日制工事の場合には予定価格を積算する際に、労務費に1.05を乗じる措置を導入した。今後も実勢を反映した労務単価となるよう努めたい。魅力度アップ、技術者の育成の取組も進めたい。

◇除雪業務に対する時間外労働規制の適用除外について(新潟県建設業協会)

 労働基準法が改正され、時間外労働規制に関して、従前は適用除外とされた建設事業についても、法改正後の施行日(2019年4月)より5年後に一般則が適用になることが示されていますが、除雪業務に関しては、適用除外にならないのではないかと危惧する声もあります。除雪業務に対する時間外労働規制の取り扱いについては、除雪業務に係るものと発注者が認める場合は、災害に準じた取扱としてください。また、仮に除雪業務が建設事業とみなされない場合でも、5年間の猶予の対象とするようお願いします。

《国交省の所見》

 現場に即した解釈がされるよう厚生労働省への情報提供を行いたい。

◇地方自治体の制度・運用改善への取組について(神奈川県建設業協会)

 地域建設業者の利益率が低い原因の一つとして市町村の入札契約制度の問題が挙げられます。神奈川県内の市町村においては、@最低制限価格の設定方法が入札後に数社の入札価格の平均値を使用することとなっていて、低い水準に抑えられているA低入札調査の体制が確保できないのに総合評価方式を採用し、実際には低入札調査基準価格が機能しないB金銭保証でなく役務保証を条件としているC設計変更に全く応じない―などの例があります。また、議会承認案件工事の揚合、変更も議会の承認が必要(軽易な変更として首長の専決処分によって変更できる制度を適用している自治体もある)なため、実際上変更が困難で、変更する場合にも議会手続きに非常に時間を要し受注企業にとって大きな負担となっています。
 この件は自治体の問題ではありますが、品確法を所管する立場から国土交通省としても、改善への支援をいただきたく検討をお願い致します。

《国交省の所見》

 品確法、運用指針の趣旨を地方公共団体に浸透させるよう、あらゆる機会で周知を図っている。指摘の点を含めて市町村レベルまで浸透するよう取り組みたい。議会承認案件については議会の判断となるが、国も実態把握に努めたい。

関東甲信越ブロック会議

若手社員
フォローアップ研修実施

 若手社員フォローアップ研修が10月25日から26日まで1泊2日の日程で、伊奈町の埼玉県県民活動総合センターで開催され、会員企業29社から94人(うち女性21人)が参加した。
 25日9時20分開始の開講式では、当協会の中村労働委員長が、「皆さんは入社後、会社で実績を積み、自信にあふれた顔になっている。今回の研修は、経験したことをおさらいし、自分を見つめ直す機会としてもらいたい。1日は24時間。この限られた時間をどう過ごし、日々を重ねていくか。しっかりとした工程が組めればそれがスキルとなる。研修の時間を有意義なものにしてもらいたい」とあいさつした。

中村労働委員長
中村労働委員長

 1日目は、まず、オリエンテーションで研修心得を説明。各班を編成し、部屋長を選出。受講態度、挨拶、集団行動訓練について説明した。
 富士教育訓練センター講師の花輪孝樹氏が務めた研修では、午前中に実践講座の「人間力向上に向けて〜人生に卒業なし・企業人の行動力〜」を、午後に実践演習の「礼節マナーの成果と応用〜社風や品位の源流・愛される技術者に〜」、グループ演習・研究の「コミュニケーション活性法〜話す力、聞く力、質問する力〜」、「交流から自己啓発へ〜さらなる親睦をかねて〜」を行い、1日目を終了した。
 2日目は、朝6時30分に起床後、朝礼。朝食をとった後、8時30分に研修を開始。午前中に実践講座の「建設業に従事する者の心がまえ〜必要とされる人材・スキル〜」、グループ演習の「行動試行訓練〜多角的発想と問題解決力〜」を行った。午後は、実践演習の「人間力向上への決意〜明日からの行動計画の策定〜」の後、研修のまとめとしてレポートを作成し終了となった。

グループ討議
グループ討議で自分の長所・短所を発表

 閉講式では、修了書授与の後、当協会の小島専務理事と富士教育訓練センターの加賀美広報企画部長があいさつ。修了者の今後の活躍への期待の言葉を贈った。

花輪講師
花輪講師

当協会協賛
建設産業育成支援セミナー開く

 当協会の協賛(日本建設情報技術センター主催)により、建設産業育成支援セミナーが10月17日午後1時から建産連研修センター101会議室で開催された。9月18日に続き、本年度2回目。
 主に建設企業の経営層、現場管理者などを対象としたセミナーで、公共工事の担い手である建設業従事者の技術力・経営力の向上を図り、公共構造物の品質・安全性の向上と公共構造物の利用者である国民・地域住民の安全確保に資することを目指している。全国土木施工管理技士会連合会の認定講習会(4ユニット)。
 第1部では、埼玉県県土整備部の高野工建設管理課技術管理担当主幹が、「埼玉県県土整備部における入札契約制度(総合評価方式)とi-Constructionの推進について」と題して講演。第2部では、日本建設情報技術センター上席調査役で国土交通省後援セミナー専任講師 の齋藤直樹氏が「技術者として成功と失敗から学ぶ効果」―工事成績評価事例/第13次労働災害防止計画への対応―をテーマに講演した。このほか、新技術情報提供システム「NETIS」 登録技術の紹介もあった。

建設産業育成支援セミナー

土木工事積算実務講習会開く
建設物価調査会に後援

 当協会後援(建設物価調査会主催)による「平成30年度土木工事積算実務講習会」が10月19日午前9時30分から、建産連研修センター200会議室で開催され約50人が参加した。
 今回は、平成30年度版「土木工事積算基準マニュアル」をテキストに、@土木工事積算基準マニュアル(テキスト)についてA平成30年度「国土交通省土木工事積算基準」等改正概要B工事費積算の仕組みと手法C直接工事費の積算D間接工事費の積算E一般管理費等の積算F土木工事積算基準の解説など、工事積算について仕組みの説明や演習が行われた。
 同講習は、全国土木施工管理技士会連合会が実施している継続学習制度(CPDS)の認定プログラムとなっており、今回の受講者には6ユニットの学習単位が付与される。

土木工事積算実務講習会

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