一般社団法人埼玉県建設業協会

経済一口メモ 2015年3月号

円安と原油価格下落の影響

 円相場は、昨年夏まで100円台前半で推移していたが、年末にかけて急激に円安が進行し、12月には1ドル=120 円を突破した。また、原油価格は、昨年のピークの6月に110ドル/バレルに比べ、本年1月には50ドル/バレル前後と約6割近く下落した。そこで、当研究所は、1月に埼玉県内企業573社を対象に円安と原油価格下落の影響調査を実施した。
 円安の影響については、回答企業183社(回答率31.9%)のうち、「マイナスの影響を多く受けている」が38%と最も多く、「プラスの影響を多く受けている」の12%を26㌽と大幅に上回っている。県内企業が、プラスの影響よりもマイナスの影響を多く受けている背景には、海外生産移転の進展等により、円安にも拘わらず従来ほど輸出が増加せず、直接・間接に輸出増加の恩恵を得にくい経営環境にあるほか、円安に伴う原材料・仕入れ価格や電気料金の上昇等によるコスト増が企業を直撃しているためと見られる。
 また、原油価格が下落した影響を見ると、「プラスの影響を多く受けている」が33%と、「マイナスの影響を多く受けている」の6%を27㌽と大幅に上回っている。県内企業が、マイナスの影響よりもプラスの影響を多く受けている要因としては、原油価格下落により円安に伴う輸入インフレ圧力が緩和され、原材料やエネルギー価格等の低下によりコストを削減し業績改善の追い風となっているためと見られる。
 埼玉県内の建設業はどうかとみると、円安については、建設業の回答企業18社のうち8社が「円安は業績に影響なし」と回答し最も多いなか、「マイナスの影響を多く受けている」が6社に対し、「プラスの影響を多く受けている」はゼロとなっている。円安のマイナスの具体的な影響を回答した企業が8社あり、うち7社は「原材料・仕入価格の上昇」、4社は「燃料費の上昇」としている。また、原油価格下落については、回答企業15社のうち「プラスの影響を多く受けている」は8社にのぼり、「原油価格下落は業績に影響なし」は6社となっている。原油価格下落によるプラスの具体的な影響を回答した企業が12社あり、全社が「燃料費の低下」をあげている。円安によるマイナスの影響で建設資材は高止まりしているが、原油価格下落による燃料費低下の恩恵が建設業界に行き渡り、今後の業績が上向くことを期待したい。
 日本経済全体で見た場合、原油価格の下落は企業収益の改善をもたらす。企業収益の改善は、設備投資を促す。同時に、企業収益の改善は所得分配を通じて雇用者所得を改善し、国内物価の低下による実質所得の改善とあいまって個人消費を増加させる。原油価格の下落が、以上のような経路を通じて、日本経済を押し上げる効果が期待される。

(ぶぎん地域経済研究所)

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