一般社団法人埼玉県建設業協会 会長 真下 恵司 |
新年明けましておめでとうございます。
皆様には、平成27年をお健やかにお迎えのことと、お慶び申し上げます。
平素、当協会に対しまして、格別のご高配を賜リ、厚く御礼申し上げます。
年末の想定外の衆議院の解散・総選挙は、政権与党の圧勝という結果となり、安堵しているところであります。
加えて、赤崎教授ら3名のノーベル物理学賞受賞というおめでたいニュースもありましたが、一方では関東甲信越の大雪をはじめ、御嶽山の噴火、広島の土石流、長野県北部の地震など自然災害が多発した1年でもありました。
国内経済は「アベノミクス」により景気回復の動きを維持、円安と株価の上昇により大企業は収益を拡大しましたが、内需中心の中小企業は急速な円安で経営を圧迫され、実質賃金が16カ月連続低下しているなど、「アベノミクス」の影や格差の拡大の指摘もあります。
また、消費増税後の個人消費や設備投資の低迷により、GDPが2四半期連続マイナス成長となり、政府は景気失速への懸念から消費税率引上げの先送りを決定し、今後は実効ある成長戦略を進めて行くとしています。
建設投資は、一昨年に続き、政府投資を中心に堅調に推移しましたが、人手不足や資材の高騰等から不調・不落工事の発生もあり、一部の事業執行に支障も出ていますが、自公連立与党が引き続き政権を担当することから、公共事業の確保、予算の増額に期待がかかるところであります。
経営環境は、利益率が上昇傾向、倒産も減少する等、改善の方向にありますが、その一方で、受注量の確保、一般管理費の確保、競争激化による収益低下、技術・技能者の不足など経営上の課題や懸念材料もあり、今後の建設投資の動向も不透明なことから、経営の先行きは依然として予断を許さないと考えています。
このような環境下、協会では、地域建設業の経営の一層の安定化に向けて、公共事業予算の確保・拡大、発注や施工時期の平準化、受注機会の増大、適正な経費と利益の確保及びダンピング対策の強化、歩切りの根絶、総合評価方式を始めとする入札契約制度の運用の改善等について、鋭意、当局に訴えていきたいと考えています。
また、安全安心で質の高いインフラの整備、維持管理の担い手として、技術者と地元企業の施工能力向上へ向けた取り組みを継続、強化していくとともに、防災・災害復旧の担い手として、巨大地震や多発する自然災害へ備えるため、災害時の緊急連絡網の充実と、少なくとも災害対応空白地帯は発生させないよう、防災対応体制の強化に努めたいと考えています。
さらに、昨年「担い手3法」が成立しましたが、将来の建設業の担い手確保に向け、県内工業高校生を対象とする出前講座や資格取得支援、現場見学会に加えて、若手社員を対象に施工管理技士1級資格取得準備講習等を行う「地域人づくり事業」に新たに取り組むなど、人材の確保・育成事業を拡充実施するとともに、新たな活動の展開の検討も進めて行く所存です。
加えて、県内各所で、支部を中心に推進している、道路清掃、河川環境整備、子供SOSなどの防犯活動、緑化活動、地域活性化事業支援等のほか、昨年、県と締結した「口蹄疫等家畜伝染病発生時の作業対応に関する協定」に基づく感染拡大防止に向けた活動等、社会貢献活動への取り組みを一層充実させていきたいと考えています。
協会では、会員一同、こうした活動を通じて、魅力ある地域建設業の創造と地域社会の発展に尽力していきたいと考えておりますので、皆様のなお一層のご理解とご協力をお願い致します。
結びに、平成27年が、皆様にとって、よりよい年となりますことを、祈念いたしまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。
受注環境の改善を中心に、県担当部署との意見交換会が11月26日午前10時から、プリムローズ有朋会館で開催された。県側からは、県土整備部、都市整備部、総務部の幹部ら13人が、当協会からは正副会長、支部長、顧問ら19人が出席のもと、当協会側から提出された4テーマを中心に意見を交わした。
改正品確法の具現化の中で、県は年間発注時期の平準化について、「契約時期を前倒しするため年度当初発注工事を定め前年度中に準備を進める」ことを明らかにした。一方、業界側からは近くまとまる発注関係事務の運用指針について、「適正な価格、適正な利潤など、「適正」という表記がされているが県はどのようにとらえているのか」とか、「少なくなったとは言え、低入札を調査基準価格で落札させることは担い手3法の精神に反するのではないか」など、かなり踏み込んだ意見も出された。
維持修繕工事の契約方法の中では、「記載されている「発注限度額」の表記を変更し「発注予定額」として来年は上半期の単価契約から採用する」とした。また、不調・不落が多発している橋梁補修工事については、「受注しやすいよう近接橋梁と抱き合わせで発注することを検討している」と述べるとともに、「維持管理業務の重要性は今後益々増してくるものと思われるので、生の声を聞きながら検討を重ねていきたい」とする考えを示した。
業界側から、災害対応の実績回数に応じた加重評価を求めたのに対しては、「評価項目全体のバランスを考え、不公平とならないよう検討させていただきたい」と答えるに留まった。
一方、契約事務手続き短縮化の議論の中で、県側から「分離・分割発注を増やし、一抜け方式を採用することでかなりの日数がかかっている。短縮のため、書類審査で可能性のある複数企業の同時審査を考えたいが、必ずしも落札できない業者も出てくるがどのように考えるか」と意見を求められたのに対し、「拘束性緩和のため業界としては歓迎」する考えを述べるなど、活発な意見交換が繰り広げられた。
①公共事業予算の安定的、持続的増額予算の確保とともに年間発注時期の平準化と納期の分散化(特に平準化につきましては、年度跨ぎ工事の多様化によって、比較的閑散期の春〜夏での本格的構造物工事などを望む) ②週休2日制に配慮した工期設定 ③地域性、貢献・協力度などに考慮した「指名競争入札の活用」など、地元建設業者が継続して役割が果たせるよう改善をお願いしたい。
これまでも適正価格での契約となるよう要望を行い、昨年は、一般管理費等の算入率が引き上げられ感謝しているところです。しかしながら、この改正による落札率の上昇は微小と思われ、更なる率の引き上げ(特に直接工事費や一般管理費の算入率の向上など)と上限枠の0.7〜0.9を撤廃し、予定価格の95%以上の受注となるように、調査基準価格および低入札価格調査基準価格の更なる引き上げをお願いしたい。
そして、全国的にも低い部類の「失格基準」の見直しも合わせてお願いしたい。
現在、県土整備事務所等地域機関の発注限度額は1億円となっているが、この制度が制定されてから相当の期間が経過、この間、地元建設業者の施工能力も向上し、多くの会社が取り組める体制となっている。そして、地域の実情に最も精通していて、県民対応についても第一線で行っている地域機関としての所長執行権限を引き上げ、事務、事業の効率化(契約事務期間の短縮、早期発注、完成)を推進していただきたい。
(1)発注見通しの公表(内容)について
発注見通しは、受注者側にとっては、一般競争入札方式や総合評価方式活用に伴って、年間受注計画を厳密に立て経営の安定化を図ることや数少ない技術者の効率的配置の観点からも非常に重要な情報であるが、情報提供時期やその情報内容が曖昧で実際記載されていない工事も発注されているので、発注見通しの発注時期、発注規模などについては、より精度の高い情報(特に補助事業)を公表していただきたい。
(2)橋梁補修工事等の発注方法(内容)について
今後、施設の老朽化により橋梁補修工事等が増加すると思われるが、補修工事は、一般的に「規模が小さく、手間がかかる地味な工事内容」のため、積算価格が実勢価格と乖離していることが多く、受注が敬遠され気味。よって、適正な利潤が確保でき、将来に渡っての専門技術の継承が可能となるよう「魅力ある工事内容」として発注していただきたい。【具対策】としては、①補修工事対象橋梁の複数化による発注 ②補修工事以外の工種との一体的発注など
(3)維持修繕工事の契約方法、内容等について
改正品確法では、「地方公共団体などが工事の性格や地域の実情に応じて、入札契約方式を選択または組み合わせて、適切に実施すること」とされているが、埼玉県においては、現在の道路等維持修繕・管理工事については、毎年同様な入札が繰り返されている。よって、事務効率や現場作業効率の観点からも「地域維持型契約方式・複数年契約」の導入など、それらの方針や検討状況をお聞きしたい。
また、草刈りの維持修繕工事単価についても線的除草で単一規模が小さい集合体であり、作業箇所における障害物も多種多様なことから、会社経費が出ないのが実情であるため、作業歩掛、単価を見直していただきたい。
さらに、単価契約の舗装指定修繕工事等では、記載されている発注限度額の半分程しか消化しないのが現状で、受注後における会社の年間経費や配置社員の給与支出の面からも最低総契約額の配慮をお願いしたい。
(4)総合評価方式の運用実績について
総合評価方式において期間短縮のための「自己採点型」が今年度から試行拡大、増加しているにもかかわらず、以前より長期間かかっていると思われる。応募中の期間、配置予定技術者がその間も拘束されるため、技術者の効率的配置の観点から引き続き改善をお願いしたい。また、平成27年度から「難工事」受注の実績を総合評価方式において、加重評価するとのことですが、当協会は、多くの機関との災害協定等を締結し、県民生活の安全・安心に寄与しているところであり、数多くの災害対応実績に対しての評価点を上げる(例えば1点→3点)とともに、その実績回数に応じた加重評価も検討していただきたい。
(5)工事の設計変更について
工事受注後においても地元住民と未調整であったり、現場と設計が不整合で現場着手が出来ないなど、発注者側の責による工事一時中止が見受けられ、単なる工期のみの変更契約が多いのが実情。当初設計段階での工事内容の確実性を増すとともに、工事一次中止に伴う「現場経費や一般管理費」の適正な変更対応をお願いしたい。また、変更時の「新規工種」については、請負比率の対象としないでいただきたい。
(6)工事検査のあり方、客観性について
品質管理項目が少ない工事(例えば、網張工事、落石防止工事、集水ボーリング工事等)については、評価項目の「加点」を見込むことが難しいと感じている。簡易な対応策としては、成績評定を無くす方法もあるが、現在は、入札参加要件や総合評価方式の採用に伴い、工事成績の重要性が増している。現場技術者は施工中や完成に向けて、「工夫と努力」を積み重ねているので、工事完成後の評価のあり方、公平性も検討、配慮していただきたい。また、中間検査の指導事項と完成検査時の指導事項では、別人であるものの、逆の指導を受けたと事があると聞いているので、検査員としての見解を客観的に統一していただきたい。
県企業局は12月4日午前10時から、「平成26年度埼玉県企業局優秀施工業者等表彰式」を知事公館で開き、25年度に完成した工事の中から施工管理、施工条件、施工技術に優れた4工事と5名の技術者を表彰した。
表彰式に先立ちあいさつに立った松岡公営企業管理者は、日頃の技術力研鑽の努力に対し敬意を表するとともに、「次の世代に引き継ぐ質の高い社会資本整備を進めていく上で、皆様方の経験に裏打ちされた高い技術力は欠かせない。引き続き、安全でコストが安く優れた品質の工事を施工するため、技術の向上と継承に取り組んでいただきたい」と式辞を述べた。
来賓として埼玉建産連の古郡会長と当協会の真下会長が出席、「本日の受賞は常日頃取り組んでいる技術向上の熱意の賜。今後さらに技術の研鑚に努められ、公共工事の適正な施工と、安全安心で高品質な社会資本整備のためご精進をいただきますとともに、建設技術の向上と社業の発展、ならびに本県建設業の発展のため一層のご尽力を」と受賞者に対し賛辞を贈った。
表彰状授与に続き、受賞者を代表して島田建設工業の島田社長が、「日本各地で多発している災害を教訓に、技術の向上に努めるとともに、県民の安心・安全を目指しさらなる精進に努めてまいります」と、謝辞を述べた。
受賞者は次の通り(敬称略)。
▽ケイワールド日清 | (監理技術者・瀬木谷 健太) |
大久保浄水場 西部系9号PC浄水池ドーム等修繕工事 | |
▽ユーディケー | (監理技術者・今井 克典)技術者のみの表彰 |
水道整備事務所 大久保浄水場西部系樋管(下流側)耐震補強工事 | |
▽島田建設工業 | (監理技術者・深井 直登) |
水道整備事務所 戸田中部線その2工区送水管更新工事 | |
▽初雁興業 | (現場代理人・梶田 祐一) |
地域整備事務所 白岡瀬地区産業団地整備その1工事 | |
▽協和設備 | (監理技術者・巻幡 博)) |
新三郷浄水場 管理本管空調設備更新工事 |