一般社団法人埼玉県建設業協会

トピックス 2014年11月号

関東甲信越ブロック会議
品確法を周知徹底
担い手確保に官民で注力

 平成26年度関東甲信越地方ブロック会議と地域懇談会が10月7日、東京大手町の経団連会館で開催された。全建側は、担い手の確保・育成に向け公共事業予算を安定的・継続的に確保することが重要と主張。先に開かれた地域懇談会においても、担い手確保・育成に、受・発注者双方が一段と力を入れる方針で一致した。
 冒頭、挨拶の中で関東甲信越地方建設業協会の渡邉会長は、「担い手三法が国会の全会一致で成立し、将来を見据えた環境の改善に大きな期待を見いだせる」と述べ、施工者の適正利潤確保などをうたった同法の適正な運用を改めて要請した。
 国土交通省の吉田・建設流通政策審議官も品確法の運用指針について「ダンピングが無くなったなど変化を実感できるようにしたい」と強調、策定に意欲を見せたほか、山田・官房技術審議官も「現場の生産性を上げることが特に重要」と強調した。
 全建の近藤会長は「運用指針をいかに実効性あるものにするかが重要で、多くの発注機関に浸透する努力を地道に継続する」としたほか、公共投資による民需圧迫論に触れ「適正な価格での発注や工期設定がなされることで公共事業の消化余力に懸念はない」と力強く語った。
 関ブロ会議に先立ち開かれた地域懇談会には真下会長、星野副会長と原専務理事が出席、国土交通省から示された「インフラの品質確保とその担い手の中長期的な育成・確保」と、全建提案の「適正な利潤の確保と担い手の確保・育成の実現を目指して」をテーマに、業界、行政が取り組む対策について各都道府県協会と意見が交わされた。
 引き続き開催された関ブロ会議には、真下会長、島田副会長、星野副会長、野中副会長、伊田副会長らが出席、6項目にわたる要望を行った後、伊田副会長による決議文読み上げが行われ、すべて採択された。

要望事項は次のとおり

公共事業予算の安定的・持続的な増額確保と人材確保・育成について

 建設産業が長期的展望に立ち、企業の財産であり品質確保や災害対応に欠かせない人材を確保し、計画的に技術者・技能者を育成するため、また、若者から魅力ある建設産業として認識され、新規入職者の増加につなげるためにも、今後の各年度の建設見通しを明示していただくとともに、これに基づき、各年度の当初予算での公共事業費(量)の安定的・持続的な確保をお願いしたい。

 回答:「25年度で公共投資の減額に歯止めがかかり、26年度についてはほぼ横バイで推移、27年度予算では前年度比1.16倍となる6兆121億円を要求している。本年1月から設置された建設産業活性化会議の中で工程表を作成し、これに沿って人材の確保・育成に努めていきたい」

自然災害対策の強化について

(1)自然災害から国民の命や財産を守る防災設備をはじめ、社会経済活動の基盤である道路などの社会資本に関する中長期的な整備目標、必要投資額を公表した上で、計画的に着実に整備を進めていただきたい。

(2)非常時の災害応急対策を効果的に進める観点から非常時の法制度を改善していただきたい。また、除雪機械に対する国の補助は、積雪寒冷地を対象としているが、今年2月の豪雪を踏まえ、除雪機械の補助は最大積雪深の実績を基準としていただきたい。

(3)何時降るかわからない雪や災害に対して必要な要員や機械を備えておく経費は、災害応急対策業務収入では賄えない。地域建設業者の災害応急力をこれ以上削減させないために、建設業本業の安定を図っていただきたい。

 回答:「インフラ整備のための予算確保は当然のことで、防災、減災、老朽化対策に重点を置き、皆様方と問題意識を共有しながら進めていきたいと考えている。また、現在、国会の中で災害対策基本法改正の動きがあるので今後の動向に注目していただきたい。本業の安定化の指摘については、品確法の改正により、マクロでは平準化、ミクロでは債務負担行為の活用など、公共事業おいて改善が期待される。また、入契法改正の中では担い手をより積極的に、安定的に確保する必要があるという観点から地域維持型が拡充されており、活用してもらいたい」

品確法などの改正趣旨の具現化による地域建設業の活性化について

(1)公共投資の継続的かつ安定的拡充とともに、年間の発注時期の平準化を図ること。

(2)地域建設業者の適正利潤確保のため、調査基準価格の引き上げとともに、一般管理費の増額、実勢価格を適正かつ早期に反映した予定価格の設定、指名競争入札などの導入・活用による地元建設業者への安定的な発注などの措置を講じること。

(3)週休2日制に配慮した工期を設定すること。

(4)市町村に対して、歩切りの撤廃、ダンピング対策の強化、契約の適正な履行確保など、改正入契法を履行するよう指導を徹底すること。

(5)建設産業のイメージアップをはじめ、就業者の確保、人材の育成など、総合的な対策に行政が先頭に立って取り組むこと。

 回答:「来年度以降も引き続き予算確保に努力すると同時に、単年度予算が原則であるが、何とか工夫をしながら平準化に努めていきたい。ご指摘の片寄りのない受注についてはデータをチェックして対応した地域要件の設定に努める。また、若手確保の観点から週休2日制が一般化できるよう見直しを図りたい。担い手確保のための利潤確保の必要性について、市町村に対しダンピングの防止、歩切りの撤廃などを国土交通大臣名で要請することとしている。なお、歩切りについては実態調査を行うこととしており、皆様方にも情報提供をお願いしたい。さらに、イメージアップや職業教育の推進について若者の意識に働き掛けるような施策に取り組む方針だ」

品確法改正に伴う低入札調査基準価格の引き上げについて

 担い手三法の中で、人材の中長期的な育成・確保のための適正利潤が確保できるよう、予定価格の適正な設定が発注者の責務として規定された。これまでの改正により落札率が僅かながら上昇したものの、収益改善に大きく寄与するものとなっていない。運用指針の策定にあたっては、更なる引き上げと上限の0.7〜0.9を撤廃し、予定価格の95%以上の受注となるよう、低入札調査基準価格の引き上げを要望する。

 回答:「上限の0.7〜0.9が担い手三法の理念と合わないとの指摘であるが、財務省との協議の中で、「上限0.9では工事が履行されない」という根拠が示されない限り変更できない。すなわち、安い価格の工事は品質が落ちることにつながらないと改正されないということだ」

主任技術者および監理技術者の拘束期間の短縮などについて

 監理技術者について、主任技術者と同様に他工事との兼務が認められるよう改正するとともに、拘束義務が免除される「発注者の都合により検査が遅延する場合」の条件や手続きを明確化してもらいたい。また、監理技術者などの諸費用は現場管理費に含まれており、「設計労務単価の上昇により工事原価が上昇し、率計上の現場管理費も上昇する」との説明ですが、その諸費用は工事費に比例するものでなく、拘束期間に比例するものである。監理技術者の日当たり単価を設定し、拘束期間により積み上げ積算を実施し、工事価格を決定されるよう見直しをお願いしたい。

 回答:「監理技術者の場合、より高度な技術が求められるため、他の工事のように兼務は難しい。技術者制度に関する課題について議論する場がスタートしたばかりで、率計上の現場管理費についても精査していきたい。ご指摘の「発注者側の都合による検査遅延」の事例があれば情報提供をいただき、検討していきたい」

将来を見据えた担い手(若手技術者など)の確保・育成について

 他製造業と同程度の営業利益率の確保による処遇改善、適切な工期(休日・休暇などの配慮)の設定による環境改善を図るとともに、若手技術者が早期に活躍できる環境やキャリアアップシステムの構築、若手技術者確保・育成に関する入札契約手続への評価反映の早期実現を要望する。さらに、若手技術者が将来に期待を持てるような国土強靭化法や国土のグランドデザイン2050などに則った計画的かつ安定的な予算の確保と整備計画推進を要望する。

 回答:「人への投資を促す取り組みは重要と考えており、試行工事を発注している。同時に必要な資格取得促進のため、技能労働者については20年以上で顕彰している建設マスターのほか、10年で表彰するジュニアマスターを検討しており、若手技術者確保のため引き続き努力してまいりたい」

決議文を読み上げる伊田副会長

IP無線機の配備式行われる
21日より配備を開始

 埼玉県土整備部は、災害時の非常用通信手段として「IP無線機」の導入計画を進めてきたが、10月21日より各出先事務所と協会各支部に配備を開始するにあたり、「配備式」が10月20日に県土整備部長室で執り行われた。当日は当協会より真下会長をはじめ、島田、星野、伊田副会長が出席、柳沢部長からの一斉試験通話を受信した。
 柳沢部長はあいさつの中で、「東日本大震災の発生以降、当時の状況を踏まえ通信体制充実のため、様々な検討を進めてきたが、IP無線機の導入により、安定した通信が期待でき、出動する建設業協会の皆様との連携がさらに強化されるだろう」と述べるとともに、さらなる充実に努めていく考えを示した。
 これに対し真下会長も、「同機の導入により、ネックとなっていた地震災害時の対応が迅速に進められるだろう。引き続き、県のご指導や訓練などを通じてさらに精度を高めていきたい」と述べ、今後の取り組みに意欲を見せた。


土木工事積算実務講習会開く
建設物価調査会と共催

 建設物価調査会との共催による「平成26年度土木工事積算実務講習会」が10月24日、建産連研修センター大ホールで開催され、会員企業から約75人が参加した。
 今回も、一件工事において工事価格(予定価格)の算出までを習得することを目的に、(1)平成26年度積算基準・歩掛の改正事項説明(2)施工パッケージ型積算方式の概略説明(3)工事費積算の仕組みと手法の解説(4)演習問題「道路改良工事設計書」作成の工事概要と関係歩掛(5)間接工事費・一般管理費などの解説(6)演習問題の積算ポイントの説明(7)演習問題「道路改良工事設計書」作成−について講演が行われた。
 同講習は、全国土木施工管理技士会連合会が実施している継続学習制度(CPDS)の認定プログラムとなっており、今回の受講者には6ユニットの学習単位が付与される。

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