経済指標からみる限り、埼玉県内の民間建設投資は低調な動きを続けているようだ。まず、個人が主体の民間住宅投資では、国土交通省が集計した新設住宅着工戸数でみると、今年4月から8月までの着工戸数は2万2,807戸で、前年同期の2万5,386戸に比べ10.2%減少している。貸家が、2015 年からの相続増税の節税対策として着工が堅調に推移し、8,454戸で1.7%増と僅かながら前年を上回っている。しかし、持家が6,674戸で19.8%減、分譲戸建てが5,777戸で5.8%減、分譲マンションが1,732戸で30.8%減と、消費増税前の駆け込み需要の反動減等によりいずれも減少している。
また、企業が主体の事務所、工場、店舗といった民間非住宅建設投資も前年に比べ減少している。4月から8月までの非居住用の民間建築着工床面積を合計すると、102万㎡と、前年同期の112万6,000㎡から9.4%減少している。内訳をみると、倉庫の合計面積は、圏央道の県内全線開通を見込み沿線に大規模物流施設が建設されていることから、32万7,000万㎡の25.8%増となり、病院も4万9,000㎡の64.4%増となっている。一方、店舗が17万3,000㎡で14.5%減、工場及び作業場が14万7,000㎡で39.9%減、事務所が7万4,000㎡で7.0%減といずれも前年を下回っている。民間住宅投資と同様に消費増税前の駆け込み需要の反動減が影響していること、消費増税後の景気の不透明感などにより企業が投資をすることに慎重になっているものと思われる。
一方、公共工事の動向をみると、堅調に推移しているようだ。東日本建設業保証鰍フ調べによると、公共工事(請負金額ベース)は4月から8月までの累計が2,273億円と、前年同期に比べ9.9%増加している。県が476億円で1.4%減とやや減少しているものの、国が227億円で0.7%増、独立行政法人等が453億円で19.3%増、市町村が982億円で7.6%増などと増加している。2013 年度の補正予算や2014 年度の当初予算の早期執行により足元の公共工事は押し上げられている。
先行き、県内の建設需要を想定すると、民間住宅投資は駆け込み需要の反動減が長引き、当面減少が続くものの、企業が主体の民間非住宅建設投資は持ち直すとみられる。財務省の法人企業景気予測調査(埼玉県分7〜9月期)によると、2014年度の設備投資計画は前年同期比1.8%減とマイナスの見込みとなっている。しかし、機械等の設備年齢が上昇しているため、今後は景気の持ち直しにより生産設備の導入の動きが拡がることも想定され、設備投資計画は上方修正されプラスに転じると期待しているからだ。また、公共工事は、今後の予算額は縮小するものの、建設労働者や資材の不足などで持ち越された工事もあり、積み上がった未消化工事の解消により、底堅く推移すると予想している。
(ぶぎん地域経済研究所)