一般社団法人埼玉県建設業協会

トピックス 2014年9月号

若年建設従事者入職促進協議会
ものつくり大学施設見学・意見交換会と
小児医療センター現場見学実施

 建設産業の担い手不足が懸念される中、若年建設従事者入職促進協議会は、ものつくり大学の施設見学および意見交換会と埼玉県立小児医療センターの現場見学会を8月1日に実施した。
 当日は、官側から加藤・埼玉労働局職業対策課長、堀口・県産業労働部就業支援課長、仲田・同 人材育成課副課長、鈴木・県建設管理課主幹が、学校を代表して楡居・熊谷工業高校校長が、業界からは島田・労働担当副会長、中村・労働委員長、忽滑谷・労働副委員長、大野・労働委員、永野・労働専門委員、島村・電業協会会長が参加した。
 ものつくり大学へ到着した一行は、まず大学の実習施設を見学した後、「若年建設従事者の入職促進」をテーマに意見交換に入った。
 大学側からは、赤松・技能工芸学部長、八代・建設学科長、澤本・建設学科准教授、川辺・学生課長が出席、大学生の就職動向について説明があり、2004年度から2013年度平均で94.7%の就職率であることが報告された。2007年のリーマンショックを契機に就職率は下降したが2013年からは上昇に転じ、多くの卒業生が当協会会員企業にも就職していることが明らかとなった。
 協議会からは、実施事業のうち特に入職促進に関して、(1)7校の建築・土木系工業高校を対象に出前講座実施(2)小型車両系建設機械の資格取得支援(3)工業高校教員を対象とした現場実務施工体験―などを実施しているほか、職場定着のため新入社員のフォローアップ研修も行う予定であることが報告された。
 意見交換の結果、島田副会長からは「施設を見学させていただき、学校で実践教育できるなど、昔に比べ若い人たちへの指導方法が変わってきていることを再認識した」。堀口就業支援課長からは「想像以上に実践に取り組む姿を見て感動した。この取り組みについてより多くの人達に知ってもらう仕掛けを作っていきたい」など、ものつくり大学に期待する声が寄せられた。
 これに対し、ものつくり大学からは「送り出す者のお願いとして、技能検定に合格した有資格者の社会的認知度を高めていただきたい。例えば給料などに反映されることになれば、学生達が自信をもって仕事に取り組むことができるだろう。働きがい、働きやすさの効果としては、(1)従業員の意欲が高まる(2)従業員が定着する(3)会社の業績につながる、ことが調査の結果明らかになっている」という意見が出され、魅力ある職場づくりとともに、待遇など雇用環境の改善が今後の課題として浮き彫りとなった。

定時総会 挨拶する真下会長

着々と進む基礎工事
埼玉県立小児医療センター建設現場視察

 ものつくり大学訪問を前に、さいたま新都心で進められている「埼玉県立小児医療センター」の工事現場(清水建設施工)を視察した。
 新病院の総事業費は約350億円、規模は鉄骨・鉄筋コンクリート造延べ65.600㎡で、高度専門医療提供のため、総合周産期母子医療センター機能が整備されるほか、小児救命救急機能を向上しているのが特徴。また、複合施設として特別支援学校が入るほか、発達障害支援総合推進センターや災害時被災者支援機能などの付加機能も設けられる。
 現場の特徴として、敷地が約1万㎡と狭く、隣接して建設中の「さいたま赤十字病院」と、免震構造で合体させることなどから難工事に指定されているという。

青経部会20周年記念式典 挨拶する関根部会長

口蹄疫等家畜伝染病
全建と共催

 埼玉県が構築しようとしている口蹄疫や鳥インフルエンザの発生時における防疫措置について、当協会との協議が長きにわたり進められてきたが、このたび双方合意に至り、8月11日午前11時から「基本協定の締結式」が埼玉県農林部長室で執り行われた。
 当日は、埼玉県から山農林部長が、当協会からは真下会長、島田副会長、星野副会長、山口副会長、片山さいたま支部長、島村比企支部長が出席のもと基本協定書に調印が行われた。
 調印終了後、山農林部長は「自然災害だけでなく家畜伝染病も大きな被害をもたらしており、迅速な初動対応が必要不可欠で、県職員だけでは限界があり、円滑な支援業務の遂行には建設業協会の協力は重要と考えている。本日、基本協定を結ぶことができ、万全の備えができたと確信している」と述べた。
 真下会長も「これまで協会内でも色々な議論があったが、緊急事態発生時の地域住民の安全・安心の確保が、公共事業を通じて地域に根ざしている我々建設業協会員一同の使命との考えのもと、一致協力して効率的・効果的な支援業務ができるよう努力していきたい」と意気込みを語るとともに、今後は、12支部と各家畜保健衛生所との間で調整の上、細目協定を作成していく考えを示した。

青経部会20周年記念式典 挨拶する関根部会長

労働安全研修会を開催
発生時対策で協定

 当協会は全国建設業協会と共催で、「労働安全を中心とした研修会」を8月26日午前9時から、建産連研修センター101会議室で開催、約40人が参加した。
 同研修は、現場などで実際に労働安全に携わる者や関係者を対象に開催したもので、「フィギアを使ったリスクKY」の研修において、参加者による演習と発表を取り入れているのが特徴。
 同日は、中込労務安全事務所の中込平一郎・所長と労働安全衛生総合研究所の高木元也・首席研究員を講師に、(1)頻発労働災害の防止とヒューマンエラー対策(2)危機管理(労働災害発生防止のための危険の特定と低減対策)(3)効果的な安全施工サイクル(グループ討議)(4)フィギアを使ったリスクKY演習・発表(5)人間心理から見る災害防止について、6時間にわたり研修を受けた。
 なお、同研修受講者には、全国土木施工管理技士会連合会認定のCPDS6ユニットが付与された。


土木・建築系学卒者の就職動向(集計表)

◇就職動向調査の概要

1調査対象校(7校8学科)
土木系:いずみ高校、熊谷工業高校、秩父農工科学高校
建築系:浦和工業高校、大宮工業高校、春日部工業高校、川越工業高校、熊谷工業高校
2調査時期
平成26年3月〜4月
3アンケート項目
(1)平成26年3月卒業生の就職動向
(2)他業種の就職者の内訳
(3)進学者の学校別内訳
(4)県内建設関係就職先企業名
(5)県内建設業への就職者を増やすための方策

◇アンケート結果を踏まえた考察

1全体では、昨年度に引き続き、県内建設業への就職者の率が他業種の就職者の率を上回った。建設投資額の増加や建築系で、現場監督や大工・型枠大工・鉄筋工など技能労働者としての採用増などの影響が考えられる。しかし、土木系については、平成24年度以前と同様に他業種の就職者が上回っており、今後も動向を注視していく必要がある。
2 他業種への就職者の内訳では、製造業の率が最も高く、次いでサービス業となっている。特に、土木系では、製造業の率が著しく高くなっている。他の業種を選択する場合においても、物を作るといった建設業と共通点がある職業を選択する傾向にあるのではないか。ちなみに、労働力調査の産業別就業者数(平成12年調査)では、製造業は第3位である。
3就職者の内家業が建設業の者の割合は、建築系では、7.5%と労働力調査の産業別就業者数(平成12年調査)の8%とほぼ同じで あったが、土木系では一人もいなかった。土木系では、家業が建設業の者は、建設業を敬遠する傾向があるのか、それとも進学する確率が高いのか、あるいは、家業と職業の選択とは、因果関係がないのかなどについては、この調査だけからは分からなかった。
4進学者の学校別内訳では、土木系は専門学校へ、建築系は四年制大学への進学者の率が高くなっている。建築系では、「設計監理の仕事を希望しても、高校卒では採用されない現実がある」との意見があったが、そうした状況を踏まえ、より高度な知識や資格取得のために四年制大学を選択する者が多いのではないか。なお、土木系・建築系とも短期大学への進学者は、一人もいなかった。
5進学者の内建設系に進んだ者は、土木系では、25%。建築系では、70%であった。建築系では、3で述べたように「設計監理の仕事」と言うように建設系の明確な職業の目標を持って進学する者が、土木系よりも多いのではないかと思われる。
6建設業への就職者を増やすには「継続的・安定的な採用」が必要との意見があった。そのためには、長期安定的な建設投資が不可欠であり、引き続き、行政に対し社会資本整備の計画的な推進を働きかけていく必要がある。
7就職者を増やし、離職者を減らすためには、「休日や賃金を増やすなどの労働条件の改善や社会保険への加入など労働環境の整備」が必要との意見が数件あった。発注機関に適正な工期設定や予定価格について要望していくとともに、社会保険への加入など行政と一体となって取り組んでいく必要がある。
8昨年度に引き続き、現場見学会実施の要望があった。休止(平成19年度まで実施)した経緯を踏まえつつも、実施の方向で関係機関と調整を図る必要がある。

◇県内建設業への就職者を増やす方策

仕事の内容を理解しておらず、自分がどこへ行くべきか迷っている内に就職試験がきてしまうケースが見られた。この点を生徒に理 解させ、行動へ移すことができれば良いと考える。
建設業の魅力をもっとアピールする。生徒向けには、リーフレット等の配布。教員向けには、直接教えていただきたい。
継続的・安定的な採用が高校卒業生の就職定着率が向上することにつながり、その結果就職者数が増加すると思う。土木系学科は埼玉県内2校しかない。ぜひとも継続的な採用をお願いしたい。
若年者と年配者の日給にそれ程開きがあるようには思えず、将来的に年間収入を考えると不安感があると思われる。年配者が優遇されるような業界にならなければ若年者は夢を持って長期にわたり、仕事を続けていこうとは考えないと思われる。
求人票は、早めに、直接学校にお持ちいただきたい。直接お会いすることで、生徒の希望状況等をお伝えし、情報交換が深まると思う。また、生徒は早く進路を決めたいと思い、7月にいただく求人票で早く企業を決めたがる。
離職者を減らすためにも、休暇や保険等の環境整備をしていただきたい。高校生は、思うほど我慢強くない。保護者も不安がる方が、多くなっている。
工業高校生の現状は、学習面はもちろんのこと生活面の指導等、至らない点も多い。高校側も責任を持ち指導するが、企業側の理解も頂けると有り難い。
本校では、平成25年度より2年生全員にインターンシップを実施した。県内各企業のご協力のお陰で、生徒も充実した経験をさせて頂いた。今後もご協力頂けると有り難いと思うと同時に、そのような生徒が、県内の企業で活躍できれば、地域や企業への恩返しになると考えている。
休日や賃金を増やすなど、労働条件の改善を進めること。特に、残業に対する賃金の保証が必要である。
先行き不透明な時代、なかなか難しいかと思いますが、昭和35〜40年位までのオリンピック景気のように、2020年の東京オリンピックによる建設波及効果が埼玉まで及べば少しは明るくなると思う。
大工や技術者の卵になったのは良いが、仕事がないというのでは、人を育てるのは難しいでしょうし、定着もしないと思う。
せっかく高校で建築を学び、設計監理の仕事を希望しても、専門学校や大学で、さらに上の建築を学んだ者しか採用しない現実では難しいと思う。
一分野でのことで効果はないかもしれませんが、工業高校の建築科卒業の者でも、設計監理業務につけられるよう、業界を挙げて求人を活発にして頂かないとだめではないでしょうか。
ゆっくり時間をかけて人を育てる余裕等ないのかもしれませんが、この仕事は大卒でなければ無理と決めつけ、即戦力になりそうな者ばかり採用するのでは先はないと考える。
業界的にも保険未加入の会社がまだまだ多く、保護者からの理解がなかなか得られていないのもマイナスイメージを先行させてしまっていると思う。
他業種同様に給与待遇面、福利厚生面でもアップしていかないと業界の活力は生まれてこないと思う。現場見学会を複数回実施していただくことにより、建設業に興味関心を持つ生徒が増えるのではないかと考える。
ものづくりという考えようによっては、毎日が楽しくなるような面があるが、バブルの頃に比べて収入の面で将来性のある仕事には思えないと考えている生徒がいる。
最近、職人希望者が安定を望む声も少なくない。業界でも、安定に対する方策を考えると、離職に少しでも歯止めがかかるように感じる。
本校では、最近、4年生の大学へ行く傾向が強くなってきていると感じている。それも建築系に限らず、スポーツ推薦やAO入試等を利用して、他学系に進む者が年々増えてきている。本人に限らず、保護者の高学歴志向、更に希望する内容の仕事に就くためには、更に上の知識や技術を身につけなければならないという社会的な要求もあるかもしれない。先が読めない時代だからこそ、しっかり学んで教員や公務員となり、安定を求めているのかもしれない。
本校の建築科に建築系でよく求人を持ってきてくれる企業は、現場監督の仕事が一番多く、次に、ハウスメーカー系や工務店系の(在来工法)の大工である。現場監督の仕事は、やりがいのある仕事なのですが、朝早く、夜遅く、休日も土日がつぶれ、更にきついことを知っているのでやりたがらない。ここで、求人と希望のミスマッチが生まれる悲しい状況に陥っている。建築教育の力だけでは、保護者までは業界に取り込めない。住み込みも嫌がり、自宅から通える職場を親も望んでいる (箱入り息子)。
平成26年3月の就職動向 進学者の学校別内訳 建設系大学等への進学者
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