埼玉県内企業の業況感は、駆け込み需要の反動減が見られることなどから、大きく後退している。当社では、埼玉県内企業へ3か月ごとに企業経営に関するアンケート調査を実施している。今年5月の調査によると、2014年4〜6期の業況判断BSIは全産業で-18となっている。この業況判断BSIは、各企業に自社の業況について「良い」、「普通」、「悪い」の3択から1つを選んで回答をいただき、「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を引いた数値で示したものである。前回2月調査では、1〜3月期の業況判断BSIは0であったので、今回は18㌽と大きく低下している。
業種別にみると、製造業では、スマートフォン関連の需要が動いている加工組立型の電子部品・デバイスの業況が持ち直している。しかし、素材型の紙加工品等、金属製品、加工組立型の電気・情報通信機械器具、輸送用機械、生活関連型の飲・食料品など多くの業種では、消費増税後の反動減の影響による減産もあって、業況が後退している。非製造業は、消費増税後の反動減から、卸売、小売などで業況後退が目立っている。
しかしながら、先行き7〜9月期の業況判断BSIは全産業で-9と9㌽上昇、持ち直す見通しとなっている。製造業は国内需要が底堅いこと、非製造業は消費増税後の反動減の影響が薄れることから、企業経営者は業況が持ち直すとみているようだ。
埼玉県内の建設業はどうかというと、業況判断BSIは4〜6月期が16と、1〜3月期の21に比べ5㌽低下したが、全産業が-18とマイナスとなるなかで、プラスを維持しており、業況感は底堅さを保っている。売上高BSI(「増加」と回答した企業の割合から「減少」と回答した企業の割合を引いた数値)は全産業の-20に対し建設業は15と健闘していることが業況感の底堅さの背景にあるようだ。
もっとも、経常利益BSI(「増加」-「減少」)は0にとどまっている。原材料・仕入価格BSI(「上昇」-「下落」)が95と極めて高く、20社中19社が上昇と回答している。また、雇用人員BSI(「過剰」-「不足」)も−65と、20社中14社が不足としている。資材価格の高騰、深刻な人手不足に伴う労務費の上昇により収益が圧迫されている状況がうかがえる。
先行き7〜9月期の建設業の業況判断BSIは6とプラス幅が縮小するものの、売上高BSIが20、経常利益BSIも20へと改善すると予測していることから、引き続きプラス圏内で推移する見通しとなっている。
建設経済研究所の建設見通しによると、全国では2014年度の建設投資を前年度比0.5%減と減少するが、48兆4,700億円と50兆円に近い高水準の投資額を予測している。2014年度の建設投資は、政府建設投資が東日本大震災からの復興予算に加え、2013年度補正予算と2014年度の当初予算とを一体で編成した「15か月予算」の効果が見込まれ、民間非住宅建設投資も企業収益の改善等による設備投資の増加が想定されている。埼玉県内の建設業の業況も底堅く推移すると期待している。
(ぶぎん地域経済研究所)