日本経済ではデフレ脱却に向けて、政府と日銀が一体となって取り組んでいる。日銀は異次元の金融緩和により2%の物価目標を実現しようとしている。「デフレが続く中では、実物投資をするよりも現金を持っているほうが有利になるので、リスクを取って新しい事業に挑戦しようとする意欲が弱まってしまう。そのため、日本経済は活力を失い、成長率も低下していった。そこで、日本経済が活力を取り戻して持続的に成長していくには、長く続いたデフレから脱却しなければならない。」と政府・日銀は考えているからだ。物価目標の実現には、企業の価格設定をする動きが変わっていくことも必要である。
そのような中で、当研究所は、「原材料・仕入価格上昇に対する価格転嫁状況」のアンケート調査を2月に実施した。埼玉県内企業573社へアンケートしたところ、247社から回答(回答率43.1%)をいただいた。全産業では「販売価格にすべて転嫁」は20%にとどまり、「ほとんど転嫁できない」が34%と最も多いが、前年調査に比べ12秒減少している。前年調査では2012年末より急速に進んだ円安に伴う原材料価格の上昇により販売価格への転嫁が困難となったが、今年は、景気の回復基調を受けて価格転嫁がすすんだものと思われる。
また、原材料・仕入価格上昇に対する対策として、「経費の節減」に取り組んでいるとしている企業の割合は74%と最も高い。次いで、多いのが「販売価格への転嫁」で、2011年調査の40%を底に上昇に転じ今年は54%と半数以上を占めている。消費増税に向けて価格転嫁に取り組む企業が増えたようだ。
埼玉県内の建設業では、原材料・仕入価格上昇に対する価格転嫁の状況についてはどうなのであろうか。アンケートによると、「販売価格にすべて転嫁」は17%と少数の企業に限られ、「6割以上転嫁」は全産業の14%に対して建設業はゼロ%であった。一方「ほとんど転嫁できない」が34%と最も多くなっている。建設業では全産業に比べ価格転嫁ができにくい状況にあるようだ。また、原材料・仕入価格上昇に対する対策としては、「販売価格への転嫁」が59%と最も多く、全産業では6%と少なかった「受注取り止め」も24%にのぼっている。
長引くデフレの影響で、企業は同業他社の動きに過敏になっている。需要が多少改善しても他社が価格を上げないかもしれないと考えるので、企業は価格引き上げをためらっているという側面もうかがわれる。しかし、建設業界では、労務費や資材費が急激に値上がりしている。自治体の発注工事では、建設コストの上昇により採算割れを恐れる建設会社が入札をためらう入札不調が相次いでいる。コスト上昇を建設会社が適切に受注価格に反映させられる環境づくりが望まれる。
(ぶぎん地域経済研究所)