2008年のリーマン・ショックを契機に、埼玉県内企業の設備投資意欲は減退したままだったが、アベノミクスによる異次元の金融緩和や、それに続く経済対策効果で大きな変化が見られるようになった。当研究所が県内企業573社を対象に実施した設備投資動向調査によると、回答企業251社(回答率43.8%)のうち、2013年度に設備投資を「実施、または予定している」企業割合が全体の67%に上っている。この割合はようやく、リーマン・ショック前の水準に戻ったわけで、景気が緩やかに回復していることで、県内企業の設備投資意欲も改善してきたようだ。
業種別では製造業が73%、非製造業は58%で、企業規模別では従業員100人以上の企業で82%、100人未満では53%と約半数にとどまり、規模の大きな企業で、しかも製造業を中心に投資意欲の改善が強く見られる。おそらく、設備の耐用年数がそろそろ限界に近づき、老朽化への対応から更新に踏み切る製造企業が多いものと推察できる。片や、規模の小さい非製造業では、まだ慎重な姿勢が続いているようで、設備投資を行っても売り上げや採算に乗らない、と判断する企業が多いようだ。
気になる投資見込み額だが、回答企業の162社を合算した結果、829億4,900万円となり、2012年度実績額の約573億円に比べ、44.7%の大幅増加となっただけでなく、リーマン・ショック前の2007年度調査実績の約807億円をも上回った。設備投資を実施、または予定している企業割合だけでなく、投資見込み額までも大きな改善がみられ、県内企業経営者のマインドは明らかに変化してきた。特に製造業全体では約368億円と前年度比で2倍超となり、化学やプラスチック、鉄鋼、非鉄金属の企業で生産設備の能力増強が計画され、全体の投資見込み額を押し上げている。非製造業でも前年度比16.8%増の約462億円に上り、住宅建設での大型投資、サービス業などの太陽光発電への投資がけん引している。
2013年度の設備投資意欲が2014年度も続くのかが気になるところだが、調査段階での「実施予定あり」との回答は38%で、半数近い48%の企業が「未定」と回答。4月からの消費増税による景気への影響が懸念されることで、慎重な姿勢を崩していないようだ。また、「実施予定あり」と回答した企業から、投資見込み額の増減を聞いた結果では、「増加見込み」企業は全産業で24%と2割程度にとどまっている。やはり、消費増税後の県内景気を見極めてから、と考えているようで、投資規模は新年度に入ってからのお楽しみとなりそうだ。(ぶぎん地域経済研究所)