現政権になってから、全国の建設業者にとって、随分と風向きが変わってきたように思える。これまでは公共工事の減少が続き、厳しい時代が続いていたが、安倍政権による経済政策で光が当たり、公共工事は一転して増加基調になり、民間工事も堅調に推移している。国土交通省が発表した直近6月の建設工事受注動態統計によると、公共機関からの元請受注高は1兆4,984億円(機械装置等工事などを含む)で、前年同月比43.1%増と高い伸びとなった。民間からの受注も2兆9,397億円、同15.7%の増加となっている。公民合わせると、6月の元請け受注高は4兆4,382億円となり、23.7%増と一時期の苦境に比べ受注環境は改善した。
ただ地域別でみると、埼玉県はあまり喜べないような受注高となっている。6月の合計受注高は925億円にとどまり、前年同月比32.1%の大幅な減少で、全国47都道府県の中でも最大の減少だ。公共機関からの受注高は320億円と、前年同月比では変わらなかったものの、民間受注高が42.0%減の605億円に低迷したのが響いた。民需の落ち込みは一都7県でも最大で、前年同月比で減少しているのは茨城県の19.0%、群馬県の35.6%だけに目を引く。
各種経済指標からも、本県の民需が振るわなかったことが読み取れる。マンションや戸建て住宅など新設住宅着工戸数は、このところの平均水準を上回って、6月は5,403戸と前年同月比16.4%増と好調だったが、オフィスビルや工場、倉庫といった民間建築着工床面積が増加していなかった。5月の21万1,000平方メートルからさらに縮小し、6月は21万9,000平方メートル、前年同月比30.3%減となっている。かろうじて20万平方メートルの床面積を維持したが、今年に入ってから最小の床面積を記録、これが6月段階での県内元請受注高に影響していたことがうかがえる。
本県でも公共工事は減少基調に歯止めが掛かりだした今、他県同様に民間需要の拡大が望まれるところだが、下半期以降は企業の設備投資が本格化すると予想する。これまで、“アベノミクス”による経済施策が、どこまで日本経済を活性化させるのか慎重だった企業も、最近のGDP伸び率がプラス成長に推移していることで、安心感を持ち始めているはずだ。加えて、日本政策投資銀行の設備投資計画調査によると、前年度比で増加していることでも期待は持てる。
同行の調査結果(全国の資本金1億円以上の企業が対象)によると、県内に投下される設備投資計画額は、全国・全産業で1,495億円が計画されており、前年度に比べ26.5%と3年ぶりに増加する見通しだ。電気機械メーカーや金属製品製造業で、工場建設といった能力増強投資を県内各地で予定しているほか、商業施設の新設や物流施設の整備も計画されている。9月になった今、既に企業の設備投資に伴う建設需要が顕在化しているかもしれない。秋風に乗って受注活動も波高し、となれば幸いだ。(ぶぎん地域経済研究所)