受発注者相互の課題を巡り、関東地方整備局との意見交換会が7月19日、さいたま新都心合同庁舎2号館で開かれ、整備局から森北局長以下幹部18人が出席したほか、さいたま市から関根・建設局理事が、また、当協会からは正副会長、支部長、青経部会長ら18人が出席した。
挨拶の中で森北局長は、補正と合わせ15ヶ月予算の発注作業を進めている中にあって、円滑な執行に協力を要請するとともに、「公共事業減少→ダンピング受注の増加→労務者賃金低下→若年入職者の減少→建設業の衰退、といった負のスパイルから早く脱却し、正のスパイラルに変えていかなければいけないと考えているが、大型の財政出動、設計労務単価の見直し、調査基準価格の再引き上げなどの政策が、切り替えのきっかけとなればと期待している。本日は建設業の将来を見据えた意見交換としたい」と述べ、忌憚のない意見を求めた。
真下会長は「地域の建設産業および入札契約制度のあり方検討会議において、地域建設業を支援する取り組みが一段と強化されようとしている中、我々はこれらの動向を踏まえながら、経営と技術に係る構造的な課題の克服に鋭意に取り組むとともに、社会保険未加入問題、若年労働者の入職促進、人材の育成などの喫緊の課題についても取り組みを強化していきたい」と述べるとともに、本日の意見交換が建設産業の新しい形のスタートになればと期待している」とし、地域業者の実情に対し理解を求めた。
当協会から提案した提案議題は、(1)入札・契約制度の改善について(2)総合評価方式の改善について(3)受発注者のコミュニケーション向上についての3項目(詳細は別掲)で、これらを巡り活発に意見を交わした。
協会側から入札・契約制度の改善について、野中副会長が受発注者双方の負担軽減や地域特性に応じた柔軟な制度改善を要望したのに対し、整備局は、「工事発注の平準化についてはあらかじめ状況を把握し、四半期ごとに発注計画を公表しているので活用していただきたい。双方の負担軽減のため、事務所発注のほとんどに施工能力評価型を採用するなど、総合評価方式の二極化に近く着手するほか、地元企業に対しては地域密着型をできる限り採用していく」ことを明らかにした。
総合評価方式の改善では、伊田副会長が地元建設業が継続・活性できるようなより良い制度改善を要望したのに対し、施工能力評価型の技術評価点の配分表を示し、「地域貢献度に応じた加点をしているほか、入札手続きの簡素化のため簡易型を採用、過度な施工能力を求めないようにしている。また、一人の技術者が多数の工事にエントリーでき、無理な場合は辞退しても良いことにしている」と回答。
受発注者のコミュニケーション向上について、島田副会長が「三者会議、設計変更審査会、ワンテデーレスポンス」の主旨を双方が十分理解した上で、その徹底とすべての案件での活用を要望したのに対し、「ワンデーレスポンスについては75%程度実施されているのに比べ、三者会議、設計変更審査会の開催が少ない。フォローアップのため、「巡回現場会議」を27事務所65現場で行った結果、高い実施が認められた。引き続き取り組み・指導の徹底を図っていきたい」と述べるに留まった。
意見交換終了後のフリートーキングでは、片山支部長が、「災害時対応で重責を担う地域建設業者の評価や社会貢献のあり方」について提議、「非常に厳しい経営状況に追い込まれており、地域社会の維持に不可欠な最低限の維持管理までもが困難となる地域も生じかねない。なんとか負のスパイラルから脱却したい」とし、その解決策を求めた。
また、伊田副会長が、「若年労働者(技術者・技能者)の入職や定着」について、「埼玉県においても若手入職者は少なく、一定期間勤続した技術者が途中で公務員などへ転職している状況が生まれており、賃金問題、就労環境問題の改善や、魅力アップ対策などについて意見を求めた。
森北局長は、「若者が建設業を敬遠する理由として(1)賃金(2)休暇(3)転勤(4)将来性(5)過酷な労働などが挙げられ、ワークライフバランスの解決は重要。課題克服に向け企業と行政がそれぞれ取り組まなければ魅力ある建設業になっていかない」と述べるとともに、「必要な仕事として社会に貢献していることが認められるようイメージアップにも取り組んでいく必要がある」と強調した。
さらに、「若手技術者確保のため、監理技術者の技術検定試験の受験資格要件の緩和や、今後のインフラの的確な維持管理や災害対応などを確保していくため、(1)人材確保や建設機材の保有状況など、地域を支える建設企業の多面的な要素の適切な評価(2)複数年契約、複数業務の一括発注、共同受注方式(事業協同組合、地域JV)などによる、安定的・継続的な体制の確保についての議論が高まっている」ことを紹介した。
これに対し、協会は「現場を管理する技術者の雇用は元請が直接行うが、鉄筋、型枠工など技能労働者については下請任せになっている」と現状を指摘、技術者と技能労働者の雇用の議論は分けて考える必要があるとの認識を示した。さらに「建設企業は人と機械を持って初めて一人前になる」と雇用の促進に前向きな発言がある一方、「公共工事の発注時期が平準化されなければ雇用の見通しが立てられない」との慎重な意見も出された。
提案議題
入札・契約制度の改善について
建設投資が減少し、一般競争入札、総合評価方式の適用が拡大される中、受注競争が激化し、ダンピング受注などによる影響で技術者・技能労働者の処遇が悪化し、人員整理や若手入職者の減少、離職までが顕著に現れてきている。地域の基幹産業として、本来の役割を十分果たしていくためには、過度な低入札を排除し適正な利益と経営の継続性を確保していく必要がある。そこで、中長期的な担い手確保が考えられるように継続的な公共投資の確保をお願いするとともに、年間を通じて公共工事発注の平準化、受発注者双方の負担軽減に資する入札方式の検討など、時代のニーズや地域の特性に応じた多様な入札方式の導入、検討をお願いしたい。
総合評価方式の改善について
昨年度、改善要望した「工事成績」や「表彰評価」、「地元企業の新規参加など」については今年度、「工事成績」、「優良工事表彰など」の評価対象期間が見直された。また、過去に直轄の施工実績が少ない企業における受注機会確保の観点から、「県・政令市」の工事成績、表彰も評価対象とする方式も検討されるなど、落札者固定化の対策などにも改善が図られようとしていることに感謝申し上げます。また、業界として喫緊の課題である若手技術者育成の観点から、若手技術者(40歳以下)を現場代理人、または、担当技術者として配置した場合は加点される「若手ターゲット方式」にも期待しているところです。
そこで、地域における災害対応、除雪およびインフラの維持管理など、地域社会の維持に不可欠な役割を担っている我々地元建設業が、継続・活性するためにも引き続きより良い制度改善をお願いしたい。特に、人員が限られている中小規模の会社では、配置予定技術者の拘束が負担となるケースが多くなるため、落札者決定までの期間短縮が図られるような事務改善をお願いしたい。
受発注者のコミュニケーション向上について
デフレ経済からの脱却、景気浮揚にあたっては、公共事業の切れ目ない執行が重要との認識から、我々建設業界としても、公共工事の円滑な執行、並びに技能労働者への適切な賃金支払を強く意識しているところである。そこで、円滑な工事進捗を図るには、受注後の受発注者双方のコミュニケーションが非常に重要と考えております。「三者会議、設計変更審査会、ワンデーレスポンス」は、発注後の様々な課題を受発注者が一丸となって円滑かつ迅速に解決するために設けられた制度である。今こそ、その主旨を双方が十分理解し、その徹底とすべての案件での活用をお願いしたい。早期発注の一環で「積算数量発注」との兼ね合いもあるが、契約後、工事内容や条件変更などが多々見受けられる状況にある。当初設計内容の正確さを増すとともに、変更指示書の内容では、「先行指示」に伴う金額的担保などを含めた確実性や、変更契約などの事務処理の短期化、円滑化を求めたい。
当協会は7月19日午後1時30分から、埼玉建産連、東日本建設業保証埼玉支店との共催により、「建設業経営講習会」を建産連研修センター201会議室で開催、会員企業の経営者・経営幹部など約40名が受講した。
同日は、「変わる公共施設の仕事にどう取り組むのか〜PRE戦略(公共施設マネジメント)の導入に向けて〜」をテーマに、建設経営サービス提携コンサルタントの五十嵐 健氏が約2時間にわたって講演した。
五十嵐講師は「公共財政が厳しさを増す中、必要な施設の建設や維持管理を効率的に行うため、PRE戦略が多くの自治体で採用され始めている。PRE戦略の狙いは、単に維持補修の仕事を効率的に行うことだけに止まらず、LCCや将来の建て替え費用のことを総合的に考えていく計画づくりで、成熟社会を迎える行政にとって重要な行政改革の柱になっている」とし、(1)財政が厳しくなる中、公共施設の仕事はどう変わるのか(2)PRE戦略の作成手順と施設マネジメントのあり方(3)PRE戦略の推進を自社の事業発展に結び付けるために(4)先進自治体による施設マネジメントの実際について、わかりやすく解説した。