2012年度も残りわずかとなったが、当研究所が埼玉県内の企業574社を対象に、設備投資の状況や、今後の見通しについてアンケート調査した結果、本年度中に実施される県内での設備投資見込み額が、約663億円に上る見通しであることが分かった。景気の回復が遅れていることから、企業の投資意欲がまだ慎重になっていることをうかがわせている。アンケートは、257社(製造業149社、非製造業108社)から回答を得た。
回答企業のうち、2012年度中に設備投資を実施、または予定している企業の割合は、全産業で64%と前年度調査に比べ2㌽減少した。業種別では製造業が横ばいの71%と、引き続き7割を超えたが、非製造業は4㌽減少して54%にとどまっている。ここ最近の調査では、2008年のリーマン・ショックの影響を受けて、2009年度には回答企業の約半数に近い52%までに落ち込み、その後は徐々に持ち直してきた。
2011年度の調査では、実施または予定企業の割合が66%にまで回復したが、残念ながら今回の調査では64%とわずかに減っている。要因は海外経済の遅れや沖縄県・尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化などで、国内の生産活動が弱い動きを見せていることが考えられる。しかし、実施・予定企業割合が前年度調査から減少していても、投資見込み額が逆に増加していることは明るい。
冒頭に記したように、設備投資見込み額は約663億円の規模で、約531億円の実績額であった2011年度に比べると大幅な増加となった。調査年度によって回答企業が異なるため、単純には比較できないが、それでも25%の上積みが期待できる。もっとも、リーマン・ショック以前の2007年度は、約807億円の実績額だったことを考えると、まだその額には至らず8割の水準にまでしか回復していない。
663億円の投資見込み額を業種別で分けると、製造業は約230億円で、前年度比43.5%増の伸びとなっている。ただこれは、化学・プラスチックや輸送用機械、精密機械の業種で、一部規模の大きな企業が生産設備と海外進出などの投資計画があったことによる。一方、非製造業は約433億円の規模で、前年度に比べ16.9%の伸び。これも、スーパーなどの一部大手小売業による新規出店や、物流施設の建設に100億円以上の投資が予定されていることで、全体の投資見込み額が押し上げられた。
最後に、2013年度の設備投資動向について簡単に触れると、実施を「予定」している企業の割合は全産業で36%、「未定」の企業は49%、「計画なし」は15%となっている。実施を予定している企業に、投資額の増減についてきた結果では、「増加」見込みが18%、「減少」見込みは19%で、約6割の企業で増やすかどうか未定の状況となっている。設備投資計画は、新年度に入って具体化することを考えると、この結果は参考として受け止めるのが普通。ただ、ここ数年の景気低迷で設備投資を控えている企業は多いはず。新規投資は別にしても、先送りにしてきた設備の老朽化などによる更新が出てくるはずで、2013年度に本格化することを期待したい。(ぶぎん地域経済研究所)