11月中旬に公表された7-9月期の実質国内総生産は年率で3.5%減と、3四半期ぶりにマイナス成長となった。個人消費の落ち込みと輸出減が要因だが、とりわけ沖縄県の尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化は、国内経済にも大きな影を落としている。どうやら、現在の減速感は一過性のものではなく、経済状況の局面変化をもたらしそうな気配だ。
日本の経済動向を判断する重要な指標の中に内閣府発表の「景気動向指数」というものがある。企業の生産活動や国民の日常消費活動、商業分野の販売動向、さらには企業の設備投資行動などを基に分析。景気の動きに先んじて変動する性質を持つ「先行指数」と、景気の動きに連動する「一致指数」、そして景気の動きに追随して変動する「遅行指数」の3種類に分けて数値化しているが、最近になってこのうちの一致指数が下降基調に転化したのである。
景気の動きに連動する一致指数は、今年4月に97.3(2005年=100)となり、前月の97.4から0.1ポイント下回ったのを起点に、毎月前月割れして直近の9月には、8月から2.3ポイント減の91.2まで下降した。これで6カ月連続の前月割れで、内閣府は景気の判断を8月の「足踏みを示している」から、9月には「下方への局面変化を示している」と引き下げている。
国内経済は、2008年2月から景気の後退局面、つまり景気循環の「山」から「谷」へと向かい、13カ月後の2009年3月を底に、今度は「谷」から「山」へと景気の拡大局面へと転じた。その拡大局面は、現在なお継続しているものと思われていたが、既に拡大局面が終わりを告げたとみる専門家も少なくない。仮に、10月の一致指数も9月から下回れば、景気の判断をさらに引き下げる「悪化」という文言が含まれる可能性が高く、そうなると政府は事実上の景気後退を認めざる得なくなる。
もちろん、正式な景気の判断には11カ月分のデータが必要で、最終的な判断には通常1年以上も掛かる。また、一致指数が半年間前月割れを続けたからといって、この先も前月割れが続くとは限らない。ただ、最近の個人消費は振るわず、企業の生産活動も鈍い状況をみると、いささか不安な面はある。先に記した通り、国内の経済が「山」として、既に後退局面に入っているとの見方は今後広まりそうだ。国内経済が後退局面に入るということは、当然地方経済、埼玉県経済にも悪影響を及ぼしてきていることは、論をまたないことであり、政府の経済対策が急がれる。(ぶぎん地域経済研究所)