一般社団法人埼玉県建設業協会

トピックス 2012年11月号

関東甲信越ブロック会議
技術者不足の対応急務

 平成24年度関東甲信越地方ブロック会議と地域懇談会が10月4日、東京大手町の経団連会館で開催された。
 冒頭、全建の淺沼会長は挨拶の中で、「建設業界は若年入職者の減少で高齢化が進み、このままでは将来の安全・安心が担えなくなる懸念が大きくなっている」と指摘し、「人材確保に必要なキーワードは、賃金、誇り、将来展望だ。企業が安定した経営を維持しつつ、人材を確保・育成できる環境整備が必要であり、行政と一緒に改善していきたい」と官民の参加を訴えた。
 関ブロ会議に先立ち開かれた地域懇談会には真下会長、星野副会長と堀本専務理事が出席、国土交通省から示された「地域建設業の持続可能な発展と効率的・効果的に公共事業の品質確保を図るための方策」と「地域の安全・安心を守るための建設業を維持するための適正価格での契約のあり方」をテーマに、業界、行政が取り組む対策について各都道府県協会と意見が交わされた。
 この中では、「方策の具体化に向けてどのように取り組むべきか。公正な下請契約や技能労働者などの確保・育成も含め、入札契約制度の中で、どのような企業努力を評価することが妥当と考えるか。社会保険等未加入対策のさらなる徹底、技能労働者の処遇改善、専門工事業者などの新たな評価の仕組みの導入など、総合的な担い手の確保・育成のための具体的方策についてどう考えるか。ネガティブなイメージを払拭し、建設産業の役割、働きがいなどをPRするために、どのように取り組むべきか。効率的・効果的に公共事業の品質確保を図るため、総合評価方式の二極化に対する取り組み、企業評価のあり方、若手技術者育成、施工管理における業務効率化の推進、支払制度の改善に向けた取り組みについてどのように考えるか」など、国土交通省側からボールが投げられ、活発な意見交換が繰り広げられた。
 引き続き開催された関ブロ会議には、真下会長、島田副会長、星野副会長、山口副会長、野中副会長らが出席、7項目にわたる要望を行い、意見交換の後すべて採択決議した。

要望事項は次のとおり

○安全・安心の確保と地域の活性化に資する社会資本整備の計画的な推進について

 公共投資の大幅な減額は、公共事業への依存度が高く民間需要が望めない地方の建設業者にとっては死活問題であり、地域経済・雇用面の縮小を招くことになる。さらに「復興予算」への投資に偏った予算配分が続けられると、被災地以外の中小建設業の疲弊が一段と進み、国民の安全・安心を確保するための災害対応や安定的な除雪体制の維持が困難な地域、いわゆる「災害対応空白地帯」のさらなる拡大が危惧される。建設業界が、これまで通り地域で果たしてきた役割を維持していくためには、個々の建設業者が企業規模に応じた受注量と適正な利潤を確保した、健全経営が大前提である。
 回答:「震災復興はもちろん首都直下型地震や3連動地震、台風などの風水害に強い国づくりに向け、真に必要な社会資本整備の予算は確保されるべき。平成25年度予算要望では約4兆4千億円を予定している」

○地域建設業者の再生・発展に向けた総合的な対策について

 瀕死の地域建設事業者の体力が回復できるよう、いわゆる「入札・契約適正化指針」の地方公共団体へのさらなる周知・指導に取り組むとともに、これ以上疲弊を深刻化させないよう「適正な価格による契約の推進(適正価格で受注できるような低入札価格調査基準価格の再引き上げなど)や「地域を守る建設事業者の適正な評価・育成」など、入札・契約制度のより一層の改善に早急に取り組んでいただきたい。
回答:「公共工事の品質確保のため、地方公共団体へのダンピング対策とし、入契法の主旨徹底を図るため、総務大臣と国交省がタッグを組んで自治体へ要請していく。適正評価においては、中小企業の受注機会確保のため地域要件を設定し、近隣実績、災害実績を考慮し、安定的な経営環境を確保していきたい」

○自然災害発生時における速やかな応急対策と本復旧に向けた取り組みの迅速化に資する仕組みづくりについて

 被災した現場の惨状を一刻も早く復旧するため、そのためのきめ細かい対応を整理し、具体化しておくことが必要と考える。国が中心となって、応急対策業務の要請に関する優先順位を定めてもらうことをはじめ、県や市町村との協議を通じて、同時に広域的に発生する自然災害に備えるために、大規模災害発生時における柔軟な発注方式の適用も含めて、具体的な仕組みづくりを進めてもらいたい。併せて、国土防災ビジョンを担う中小建設業の役割を国民にしっかりと周知していただきたい。
 回答:「入札事務処理は、緊急時においては特例措置として随意契約、指名競争入札の適用は可能。大震災の対応を活かすため、検証し恒久措置として検討する」

○設計変更審査会の協議・審議を経た追加・変更契約について

 設計変更による概算額を提示しているものの、変更契約締結時の金額と大きく乖離している場合がある。建設業法で元請業者は、下請業者には着手前に金額を決定することを求めていながら、発注者の行為はこれと矛盾している。特に、標準積算基準にない資機材、特殊工法の金額については、第三者機関に特別調査を依頼し、積算に反映させることとなっているが、見積もった価格・金額との乖離が大きいことがある。設計変更審査会で協議・審議し、設計内容が合意された後は、設計内容と概算額を工事打合せ簿に記載するか、速やかに設計変更契約を締結し、施工に取りかかれるよう要望する。また、資機材、特殊工法の金額については、調査方法について決定経緯が不明瞭であることから、受注者側にも提示するよう要望する。
 回答:「20%を超える事案や、構造物など重要な変更については適正に対応しているが、引き続き努力する。負担、省力化を図るため10月1日から施工パッケージ型を活用している。調査方法の開示は、調査会社のノウハウであり難しい」

○公契連モデルの改正について

 公契連モデルでの最低制限価格の一般管理費が0.3と他の費用に比べ極端に低く設定されている。地方の中小零細企業の一般管理費を検証すると、給与、法定福利費、福利厚生費、社会保険費、減価償却費、租税公課、退職金など、必要不可欠な経費で70%以上を占めている。この0.3の数値が結果として経営を圧迫し、雇用と消費に繋がらないため早急な検証の上、改正を要望したい。
 回答:「一般管理費については、修繕維持費、目的の品質確保、義務的経費など客観的データが無いと難しい。本支店を外すとか、この工事ではこの項目は要らないと考えるのは良いが、否定するのは難しい状況である」

○公共工事設計労務単価の改善について

 価格競争激化に伴う低価格受注が支払賃金の低下を招き、それが翌年の実態調査に反映され労務単価が下降する「デフレスパイラル」が進んでいる。このスパイラル現象をくい止めるため、調査方法の抜本的な見直しをお願いします。
 回答:「調査開始以来、取引の実態は予決令で、賃金は労使間で決めることになっているが、改めるべきは改めていきたい。調査方法、ダンピング対策の重要性は十分認識している」

○建設技術者問題について

 群馬県建設業協会が実施したアンケート調査によると、土木施工管理技士の過半数が50歳以上で、6割を超える企業が技術者不足を感じている。国においては、受験に必要な実務経験年数の短縮や若手技術者の育成作について目に見える対策を講じていただきたい。
 回答:「担い手の確保は、教育課程から身につけることが重要。また、就労環境を改善し官民共同で人材を確保することが検討されていることから、関係省庁連携し検討を加えたい。資格要件の変更は、品質確保の観点から簡単にできる状況にない」


平成24年度優良従業員表彰式
84社・188人を顕彰

 平成24年度建設業優良従業員表彰式が10月5日午後2時から、建産連研修センター大ホールで開かれ、30年以上勤続者と10年以上勤続者を合わせた188人に対し表彰状と記念品が贈られた。
 今年度は、30年以上表彰者31社・63人、10年以上表彰者53社・125人で、受賞者を代表して近藤建設リフォーム営業リーダーの土屋健二氏(30年以上)と、オキナヤ建設部係長の松浦羊輔氏(10年以上)に真下会長からそれぞれに表彰状が手渡された。
 式辞としてあいさつに立った真下会長は、「受賞された188名の皆様方に協会を代表して心からお祝いを申し上げます。長年にわたり建設業に従事し、社業の発展に大きく寄与され、公共事業をはじめ住宅・社会資本の担い手として尽力。その職務に対する真摯な取り組みと、日々自己研鑽してきた不断の努力が、本日の輝かしい栄誉に結実したものである」と敬意を表す一方、「各企業とも極めて厳しい環境下に置かれ、従業員の雇用・福祉面にも影響が出ているが、経営改善への取り組みはもちろんの事、安全・安心で豊かな地域社会の創造のため、業界全体が一丸となって県民の付託に応えていかなければならない。今後とも、協会の再生と社業の繁栄のためさらなるご尽力をお願いしたい」と激励した。
 続いて、来賓として出席した県土整備部の渡部貞一副部長が、「東日本大震災後の復旧作業で証明されたように、知識、経験、技術力に裏打ちされた地域建設業の力がとても重要。本日受賞の皆様には今後益々研鑽され、社業と業界の発展に尽力されることを期待する」と祝辞を述べた。
 最後に、受賞者を代表して近藤建設の土屋健二氏が、「本日の表彰はご臨席の方々をはじめ、諸先輩の暖かなご指導の賜物」と感謝の意を表すとともに、「これからも企業の中核として経営再生の一助となるべく、努力してまいりますので今後ともなお一層のご指導を」と謝辞を述べた。


記念講演を開催
「これからの健康管理」

 表彰式終了後には、フリーアナウンサー・健康管理士の小久保晴代氏を講師に招き、「これからの健康管理」〜毎日をイキイキと〜と題する記念講演が行われた。小久保氏は、一般企業、労働組合、各種団体、官公庁などをはじめ、中高年齢者、ダイエット希望者などから講演や健康管理指導の依頼があり年間講演数は60本を超える。小久保講師は毎日を活き活きと過ごすため、簡単にできるストレッチなど、実技を交えた運動指導を約1時間半にわたって行った。


技術提案書作成手順学ぶ
総合評価対応セミナー開催

 建設情報化協議会主催(当協会後援)による本年度第2回目の「総合評価落札方式対応セミナー」(CPDS4ユニット研修)が10月18日午後1時30分から、建産連研修センター第1会議室で開催され、約40人が受講した。
 今回は、総合評価落札方式に対応するため、技術提案書作成のポイントとして、記述方式・評価方式の基礎のほか、ワークシートを利用した技術提案書の作成方法、手順、注意点について指導。さらに、事例を紹介し文章表現の注意点などについて具体的な解説が行われた。


勤退共理事長表彰
伝達式行われる

 建設業退職金共済制度普及協力者に対する勤退共理事長表彰の伝達式が、10月22日午前10時から協会会長室で行われた。
 表彰者は、関中建設(比企支部)と三国建設(秩父支部)の2社で、真下会長から表彰状と記念品が手渡された。
 当日は、関中建設からは中嶋茂社長が、また、三国建設からは大川泰取締営業部長が来所、受賞後、真下会長としばし歓談が続いた。


会員親睦ゴルフ大会開かれる
島村氏が優勝 団体戦は越谷支部

 当協会の「会員親睦ゴルフコンペ」が10月23日、狭山市の武蔵カントリークラブ豊岡コースで開かれ、各社役員や青年経営者部会員など83名が参加した。
 午前8時、アウト、インに分かれ同時スタート、ペリアI2方式による競技の結果、島村 健氏(島村工業)がネット70.0(H24.0)で優勝した。準優勝は木村芳雄氏(木 村建設)、3位は織田隆志氏(織田)。
 また、真下会長から会長賞として「団体賞」(ベストスコア上位3人の合計)が設けられ 今年も越谷支部が優勝した。
主な成績は次のとおり。敬称略
 ○1位 島村 健(N70.0 H24.0)
 ○2位 木村芳雄(N70.4 H9.6)
 ○3位 織田隆志(N70.4 H15.6)
 ○ベスグロ 稲村隆浩(77)
 〇団体I位 越谷支部(212.2)
 〇団体2位 児玉支部(215.2)
 〇団体3位 比企支部(218.0)


一般社団移行に向け
臨時総会を開催

 一般社団法人移行に係る臨時総会が10月29日午後2時から、浦和ロイヤルパインズホテルで開催され、公益目的支出計画案や入会および退会に関する規程案などを承認した。
 開会に先立ち、あいさつに立った真下会長は、「当協会では、平成25年4月1日に一般社団法人への移行を目指して準備を進めているところであるが、本日の臨時総会は新法人移行に必要な議案についてご審議いただくため、開催させていただいた。これから、一般社団法人移行にかかる認可申請に関する決議、移行に伴う規程整備に関する決議、移行をまたぐ役員の取り扱いに関する事項の決議など、重要な議案をご提案いたしますので、ご審議の上、議決いただきますようお願い申し上げます」と述べ、総会の円滑な進行に協力を求めた。
 議案審議では、第1号議案「一般社団法人に係る認可申請に関する決議について(公益目的支出計画案の承認)、第2号議案「一般社団法人移行に伴う規程整備に関する決議について(入会・退会などに関する規程案などの承認)」、第3号議案「定款・各規程などに関して主も旨に反しない字句などの修正を、理事会もしくは会長に一任する件の決議について」、第4号議案「特例民法法人から一般社団法人への移行をまたぐ役員の取扱いに関する事項の決議について」の各承認案件を順次上程し、いずれも原案どおり承認、可決された。


「国土強靭化法など」
佐藤参議院議員が講演

 臨時総会終了後、佐藤信秋参議院議員から「国土強靭化法」をテーマに講演をいただいた。
 講演の中で佐藤議員は、10年間で200兆円にのぼる「国土強靭化基本法案」誕生の経緯について説明。「首都直下や南海トラフによる大地震の切迫性も含め国土を考えた場合、なすべきことは「復旧・復興」と「事前の備え」という考えに至った。30年後、50年後の将来を展望し、どのような国土のあり方にしていくのか、議論の結果、多極分散型の国土形成により「致命傷にならないように備える」「早急に復旧ができる」「先に向かって動き出すことがすぐできる」との観点が非常に重要と分かり、国土強靭化法案の基本理念ができた。一極集中では致命傷を負いかねず、多様化による国土形成を図り、複数の国土軸を持つ構造にし、社会活動のすべてを持続可能な姿にしていかなければならない。迫り来る大地震に対し、世界で最も脆弱と言われるわが国の国土にどう対応していくのか、それには公共投資をしっかりと積み重ねていくべきだ。コンクリートから人へという単純なスローガンで世の中をくくるのがいかにまちがいであったかは明白。さらに、現在のデフレ経済を助長しているのが公共投資の削減だ。今こそ広い意味での公共投資が必要」と説いた。

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