円高ドル安のまま、高止まりしている為替相場。輸出企業にとっては、『いい加減何とかしてほしい』との声が多く聞かれるが、県内企業も、長引く円高で拠点を海外に移している企業が多いことが分かった。当研究所が実施した「埼玉県内企業海外進出状況調査」(577社を対象に266社から回答、回答率46.1%)によると、既に海外進出している企業は、全体の約3割に当たる71社で、製造業を中心に拠点を海外にシフトしている。また、海外進出している企業を含めて、新たに進出を検討している企業が23%あり、県内での設備投資に少なからず影響を与えそうな結果となった。
同調査結果から海外進出状況を詳しく見ると、進出を果たしている企業のうち、「今後も新たな進出を検討している」企業が12%で、「新たな進出は検討していない」企業は15%と、今後の計画には判断が分かれている。しかし、今まで進出はしていないが、「今後は進出を検討する」との進出予備軍は11%あり、現在の進出状況とほぼ変わらない企業割合となることから、この先も県内企業全体では、海外進出状況に大きな変化は生じないようだ。
海外進出を積極的に進めているのは当然のごとく製造業で、37%の企業が現在既に何らかの拠点を設けている。しかし、こちらも先々の話になると考え方は分かれ、引き続き進出を検討していく企業が16%だったのに対し、進出終了組が21%と少し上回った。進出はしていないが、新たに検討する企業が15%あったことを含めると、製造業では全体の半数以上の52%が海外進出にかかわる状況にあり、設備投資の増加を期待する建設業界にとっては、何とも切ない状況だ。県内製造業が輸送用機械や一般機械など、加工組み立て業種が中心となっている産業構造だけに仕方がない。
建設業の受注問題から少しそれるが、海外の進出先で最も集中していた国が中国で、全産業ベースで72%、製造業では74%に上っている。欧米にも進出している企業もあるにはあるが、ほとんど少数派で、中国中心の東アジア地域となっている。これが、今後進出を検討している国となると、大きな変化がみられた。
ダントツだった中国は、最近の両国関係にみられる『政冷経冷』状態を懸念してか、あるいは製造拠点としてのアドバンテージが薄れてきたのか、全産業で27%に落ち込み、製造業でも30%に落ち込んでいる。代わって注目されている国がタイやベトナムで、全産業でともに32%、製造業ではタイが36%、ベトナムは30%だった。民主化が進むミャンマーも進出先として注目されるなど、中国のカントリーリスクを考慮して、チャイナプラスワンを求める動きが県内企業でも増加している。(ぶぎん地域経済研究所)