一般社団法人埼玉県建設業協会

経済一口メモ 2012年9月号

回復基調に入った県内民間建設需要

 埼玉県内の民間建設需要が昨年3月の東日本大震災で落ち込んでいた状況から脱して、回復基調に入っているようだ。まず住宅市場だが、マンションや戸建て住宅などの不動産市場を専門的に調査研究している不動産経済研究所(東京都新宿区)の調べによると、今年1月から6月までの半年間に、埼玉県内で供給されたマンションの戸数は2,433戸で、前年同期に比べ281戸増加した。
建て売り市場も好調で、上半期中に758戸が供給され、前年同期に比べ37.3%と大幅に戸数を増やしている。マンションを含めて、県内の住宅市場は盛り返しているようだが多分に、昨年の大震災で供給が落ち込んだ反動増とも言える。ただ、都心への利便性の良さから、県南部を中心とする県内に住宅を求めるユーザーのマインドは強く、今後も購入熱は下がらないようで、「秋口以降も供給量は衰えない見込み」と、同研究所では指摘している。
 供給量が増加しているということは、それだけ建築着工戸数も増加しているはずだが、国土交通省集計の新設住宅着工戸数からみると、供給面との間には少し差がみられる。賃貸住宅などを含めた上半期の着工戸数は2万7,785戸で、前年同期に比べ約5%増の1,345戸増加しただけだ。5%増の要因が震災の反動増であると掴みきれない面もあるが、県内の住宅市場は回復基調に入ったことがうかがわれる。
 一方、住宅を専門に扱っていない建設業者にとっては、事務所をはじめ工場、店舗といった民間建築や公共工事の動向が気になるところだ。マンション市場と同様に、経済指標からみる限り公共事業を除くと、概ね良好な状況で半年間が過ぎた。上半期の公共工事は請負金額ベースにすると1,685億円(東日本建設業保証調べ)で、前年同期に比べわずか32億円ほど下回っているが、非居住用の民間建築着工床面積は同期に比べ増加している。
半年間の床面積を合計すると126万7,000m2で、前年同期の95万6,000m2から32.5%増加した。中でも店舗建築の合計面積が23万9,000m2で、同146.3%の大幅増となっているほか、病院建築も同77.6%増の11万2,000m2、工場及び作業場は同46.3%増の28万1,000m2、倉庫も同34.5%増の31万2,000m2と軒並み大幅な増加を示している。
 県内の建設需要は、民需の面では昨年上半期に比べ増加していることで、とりあえずは震災の落ち込みから回復していることは確かだ。残り12月までの半年間もこのままの状況で推移してくれれば、来年3月末までの2012年度を通した大幅な回復も期待できそうだ。(ぶぎん地域経済研究所)

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