一般社団法人埼玉県建設業協会

トピックス 2017年7月号

安定経営に向けた予算確保と平準化などを要望
関東地方整備局との意見交換会

 受注者相互の課題を巡り、関東地方整備局との意見交換会が6月23日午後2時から、さいたま新都心合同庁舎2号館で開かれ、整備局から大西局長以下幹部19人が出席したほか、埼玉県から磯田建設管理課長、さいたま市から下村技術管理課長が、また、当協会からは正副会長、支部長、顧問・相談役、青経部会長ら16人が出席した。
 冒頭、挨拶に立った大西局長は、「働き方改革、生産性向上などが業界のキーワードとして叫ばれているが、週休2日制の導入は受発注者双方にとって高いハードルとなっており、力を合わせてレベルをあげていきたい」と述べ、忌憚のない意見を求めた。
 星野会長は、「各種の施策展開により経営環境は少しずつ良くなっているが、大手と中小の格差は広がっている。長時間労働や休暇が取りにくい環境により、若年労働者が集まりにくい状況にあるが、ICT技術の活用などによる働き方改革を進め、給料が良く、休暇が取れて、将来に希望が持てる新しい3K産業に脱皮していく必要がある。しかし、建設業界の努力だけでは難しく、一層のご支援をいただきたく議題を提案させていただいた」と述べ、有意義な意見交換となることに期待した。
 協議に先立ち、関東地方整備局から平成29年度入札・契約、総合評価の実施方針や、建設産業行政の動きについて情報提供が行われたのに続き、当協会からは担い手確保・育成のための活動状況が小島専務理事より報告された。


働き方改革の着実な推進に向け意見交わす

 当協会からの提案議題は、①公共事業予算の増額確保と県内業者の受注機会の拡大について②施工時期の平準化について③適切な利潤の確保について④ICT技術活用の推進についての4項目で、これらを巡り活発に意見が交わされた。

公共事業予算の増額確保と県内業者の受注機会の拡大について(伊田副会長)
 国土交通省の公共事業予算は5年連続で微増となっており、当局のご努力に感謝申し上げます。地域の建設業が、今後とも"地域インフラ"として、社会基盤の整備や維持管理を担うとともに、災害発生時には県民の安心・安全の守り手として、その能力を維持、発揮するためには、まず何と言っても、安定的な経営の担保が不可欠です。このため、引き続き、公共事業予算の継続的な増額確保と県内業者の受注機会の拡大をお願いします。

回答
 「地域インフラとも言える建設業には、激甚化する災害に対する防災・減災対策や、老朽化するインフラの戦略的な維持管理・更新、強い経済を実現するためのストック効果を重視した21世紀型のインフラ整備など、安全と成長を支える重要な役割が期待されていると認識している。厳しい財政状況の下、国民生活の将来を見据えて、既存施設の機能が効果的に発揮されるよう計画的な整備を推進するため、必要な公共事業予算を安定的・持続的に確保するよう努めているところ。また、県内業者の受注機会拡大のため、総合評価において、地域精通度や地域貢献度を高く評価する「地域密着工事型」や、災害対応を含む地域維持の担い手確保を目的とした「地域防災担い手確保型」を実施しており、平成29年度においてもこれらの取り組みを引き続き実施していく」

施工時期の平準化について(島村土木委員長)
 関東地方整備局におかれましては、施工時期の平準化にご配慮をいただいているところですが、平成29年度当初においても、手持ち工事のない技術者が多数存在している状況です。限られた人材、資機材を有効活用し、生産性向上を実現するためには、施工時期の平準化をさらに進めていただくことが不可欠であります。このため、①2か年国債、ゼロ国債の一層の拡大②繰越制度の柔軟な運用と必要経費の適切な計上③県、市町村における取組の促進をお願いします。
 特に市町村においては、改正品確法の主旨が未だ十分に理解されていない面も見受けられることから、適切な工期の設定や設計変更なども含め、ご指導いただくようお願いします。

回答
 「施工時期の平準化については、年度当初に事業が少なくなることや、年度末における工事完成時期・履行期限が過度に集中することを避けるため計画的な発注に努めるとともに、工事の性格、地域の実情、自然条件、建設労働者の休日などによる不稼働日などを踏まえ、状況に応じ繰越制度などを活用し、引き続き適切な工期の設定に努めていく。また、施工時期の平準化目標については、年度の平均稼働件数・金額と、4〜6月期平均稼働件数・金額の比率を「平準化率」として目標を定め、平成29年3月に開催された関東ブロック発注者協議会(幹事会)において「平成30年度までに平準化率0.9以上を達成する」との目標を公表した。平準化を目的とした2年国債については、平成28年度〜平成29年度のおおよそ1.5倍に拡大し、平成29年度当初予算より、ゼロ国債を設定するなど計画的な工事発注を行っていく。さらに、工事費の設定にあたっては、最新の積算基準、最新の単価を用いて適切に算出していく。改正品確法の趣旨徹底に関しては、各地方整備局単位で管内都道府県の担当課長との間で、入札契約制度などに関して意見を交わす「ブロック監理課長等会議」を年2回開催している。関東ブロックでは、「担い手3法の着実な運用」を検討課題の一つとして意見交換するとともに、管内1都8県との間で、担い手3法のさらなる浸透に向け、「効果的なダンピング対策の徹底」や「施工時期の平準化」に取り組んでいくことを申し合わせたところ。これに併せて、都県による市町村への助言などのフォローを促していくことについても申し合わせており、今後とも、この申し合わせに沿った形で取り組みの徹底を図るとともに、より取り組みの裾野が広がるよう努めていく。先般、政府において「働き方改革実行計画」が取りまとめられたが、この内容を踏まえ、改めて、適切な賃金水準と休日の確保を促進する観点から、適正な工期設定をするよう、入契法に基づく通知として、6月15日付けで総務省と国土交通省の連名により、都道府県知事あてに発出したところ。加えて、建政部では、毎年十数か所の市町村を訪問し、改正品確法への理解を求めるとともに、公共工事の円滑な施工確保を要請している。建設産業政策会議における地域建設業WGでも、市町村などとの連携の必要性が示されているが、こうした観点も踏まえ、今年度もより積極的に活動を展開していく。なお、品確法の運用指針などに関する建設業者からの相談受付先として、建政部に「建設業フォローアップ相談ダイヤル」を設置している。現場の生の声を聞かせていただき、その内容に応じて発注者などへも情報提供するようにしているもので、こうした対応が、発生事務の見直しにつながるのではと期待している。引き続き、こちらの専用回線も活用いただきたい。このほか、地方自治体、国などで構成している「関東ブロック発注者協議会」で、運用指針の説明と「設計変更ガイドラインの改定」など関東地方整備局の取り組みについて情報提供している。平成29年度も、引き続きこれらの取り組みを継続するとともに、「関東ブロック発注者協議会」の新たな取り組みとして、発注関係事務の取り組み状況を評価する「全国統一指標」により、「設計変更ガイドライン」の活用や設計変更実施状況などをフォローアップ調査し、その調査結果を踏まえ、必要に応じて、県、市町村とも協議しながら対策を検討していく」

適切な利潤の確保について(武井副会長)
 公共工事設計労務単価と低入札価格調査基準の数次にわたる引き上げにより、地域建設業の経営状況は改善傾向にあり、深く感謝申し上げます。しかしながら、協会の調査では、会員企業の平成27年度の利益率は3%程度で、大手ゼネコンとは格差があり、従業員に対する十分な処遇改善や設備投資は困難な状況であります。また、公共工事設計労務単価引き上げの恩恵が、最前線の技能労働者にまで届いていないとの声も聞こえております。水防法改正にもみられるとおり、地域建設企業が社会に果たす役割への期待はますます高まっておりますが、これに的確に応えるためにも、通常の事業において適正な利潤を確保し、企業、労働者ともにしっかりとした体力を保持していく必要があります。このため、①低入札価格調査基準のさらなる引き上げ(一般管理費の算入率の引き上げ)と上限の撤廃②賃金実態を踏まえた公共工事設計労務単価のさらなる引き上げをお願いします。

回答
 「低入札価格調査の基準は、公共工事の適正な施工が通常見込まれない契約の締結を防止するための基準であり、あらかじめ財務大臣と協議を行った上で定めることとされている。具体的な低入札価格調査の基準については、平成20年4月以降、順次改定を行い、平成29年4月の改定では、直接工事費の算入率を10分の9.5から9.7に引き上げた。低入札価格調査基準の変更については、十分な検討を要する事項と考えており、今後も実態に即した予定価格の設定など、企業の適正な利潤確保に努めていく。なお、低入札価格調査の基準については、全国的な内容のため本省にも伝えていく。公共工事設計労務単価は、公共工事に従事する建設労働者の賃金の支払い実態を職種ごとに労働基準法に基づく「賃金台帳」から調べる「公共工事労務費調査」によって決定することが大原則となっている。賃金実態を踏まえた労務単価の引き上げのためには、建設労働者などへしっかりと適切な水準の賃金が支払われ、その結果を労務費調査で報告していただくことが重要となるため、労務費調査への協力をお願いしたい」

ICT技術活用の推進について(野中副会長)
 地域の建設業が、将来にわたって社会的責務を果たしていくためには、担い手の確保とともに、生産性の向上が不可欠であります。生産性向上のためには、施工時期の平準化と合わせて、建設生産のあらゆる段階においてICT技術を活用し、合理化を図ることが必要です。国土交通省では、ICT施工を平成28年度の土工から、平成29年度には舗装工などに拡大するとしており、地元建設業としてもできる限りの対応をする考えでおります。つきましては、施工面だけではなく、設計や工事関係書類の作成まで含め、今後のICT技術展開の方向性や課題について、意見交換をお願いします。

回答
 「ICT技術は、調査、測量、設計、施工、検査などを、3次元データを一貫して使用することにより、建設生産プロセスの最適化を図るもの。ICT土工については、平成28年度に蓄積された活用実態を反映し、新たな3次元計測技術の基準や要領の改定・追加が29年3月に通知されたところ。平成29年度においても、基準類のフォローアップ調査を継続し、課題解決に取り組むこととしている。ICT舗装工については、平成29年度の本格適用に向け、ICT土工同様に発注方式を設定し、関連基準や要領が整備されたところ。今後、課題の洗い出し、改善に向けて現場での活用実態を調査することとしている。また、ICT活用工事を実施することにより、出来形管理と品質管理において書類の削減が図られていると思われる。今後、ICT活用工事でどの程度の書類削減効果があるのか、実態を確認していく考え。3月31日には、本省において報道資料「i-Constructionの推進に向けた基準類の策定〜生産性向上を通した魅力ある建設現場の実現に向けて〜」が発表された。その中でICTのさらなる活用として、ICT舗装工とともに、橋梁分野における生産性向上も目指す「アイ・ブリッジ」が掲げられている。今後も、本省の動向を踏まえ、ICT活用分野の拡大に努めていく」

フリー討議

地域建設業のイメージアップについて(中里川越支部長)
 建設産業は、東日本大震災や熊本地震などの大災害発生時の働きなどにより、行政においてはその必要性について認識をいただいているところです。しかしながら、災害現場の最前線で道路啓開作業などを行う建設業の活躍は、マスコミではほとんど報道されることがないため、一般国民に対しては、かつての3K産業や談合などの悪いイメージが払しょくできておらず、このことが若者の入職を阻害する一要因となっていると考えられます。
 建設業界はPRが下手との指摘もありますが、業界にとって現場においては作業することが最優先であり、人手の関係からも、自衛隊のように広報班を編成することは不可能であります。つきましては、地域建設業のイメージアップにつながり、担い手確保にも寄与するよう、国土交通省や県が広報班を編成して現場の状況を撮影し、マスコミに提供するなど、建設業の現場、特に災害等緊急対応時の状況の国民に対する見える化を図っていただければありがたいところです。

回答
 「災害時の公報については、緊急災害派遣隊に1名の広報職員を付けている。熊本地震災害時には、建設業協会から情報提供を受け、国土交通省より発信し効果があったことから、できれば業界側で情報収集をお願いしたい。建設業が取り組む担い手確保と建設現場の生産性向上を支援するため策定した「地域インフラサポートプラン関東」の中で、技術者に光をあてる「技術者スピリッツ」をホームページ上で開設した。そのほか、各取り組みに対しいただいている評価を踏まえ、内容を更新・拡充し継続していく。芸能人を使ったPRについては、若い人に届くよう工夫していく必要があると考えている」

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