一般社団法人埼玉県建設業協会

経済一口メモ 2012年10月号

2012年度の県内設備投資

 本年度も上半期が終わり、10月から下半期がスタートした。まずこの上半期を振り返ると、県内経済は概ね予想通りの成長を続けており、下半期もこのまま推移すれば、当研究所が予測した2012年度の成長率は、2.1%程度に落ち着くものと思われる。気になるのは県内民間企業の設備投資動向だが、日本政策投資銀行の調査によると、2011年度に比べ2012年度は3.9%の増加と、小幅ながら活発な状況示す数値となっている。2011年度が前年度比でマイナス17.5%と、大幅に落ち込んでいる結果からすると、本年度はかなり期待できそうだ。
 設備投資動向は、建設業界にとって注視すべき経済分野で、年に1回発表されている同行の「設備投資計画調査」は、県内の動向を知る上で貴重な判断資料となっている。その本年度調査によると、全産業の県内投資額は約1,661億円で、2011年度に比べ63億円増加した。産業別でみると、製造業が前年度比61億円増(10.5%増)の657億円で、非製造業は同2億円増(0.2%増)の1,024億円となっている。製造業は3年連続の二桁増となり、非製造業も微増ながら1年ぶりに増加に転じた。
 県内投資額の底上げを支えた製造業は、工場新設が一巡した紙・パルプなどの業種などで設備投資が減るものの、能力増強投資が見込まれる輸送用機械、あるいは研究開発投資や能力増強投資が予定されている一般機械で増加。さらに、新製品・製品高度化投資がある電気機械などの業種で、本年度中に設備投資が実施、または計画されている。
 一方、ここ数年1,000億円以上の投資規模となっている非製造業では、送配電設備投資での電力、安全対策工事や能力増強投資の運輸などでの投資が中心。しかし、データセンターの新設が一段落した不動産に加え、大型商業施設の新規出店が一段落する卸売・小売、あるいはサービスの業種で設備投資を抑えたことから、非製造業全体の投資額を前年度比微増にしている。
 ところで、1,661億円という県内設備投資額は、埼玉県の成長力からすると、まだまだ少ない規模だ。この調査では埼玉を含めて首都圏の千葉、東京、神奈川の1都3県全体を集計しているが、その投資規模は3兆3,611億円に上っている。東京都が2兆2,641億円と、全体の7割近くを占めているのは別格として、神奈川県の5,053億円、千葉県の4,257億円に比べると、何とも寂しい規模と言えないだろうか。特に経済規模で本県が優位に立っている千葉県に比べ、半分にも満たない設備投資額とは…。(ぶぎん地域経済研究所)


埼玉県内の設備投資動向

企業名等内容投資額(億円)等時期
高田製薬(東京都) 後発医薬品の需要増に対応するため、幸手市に新工場を建設。併せて、新本社をさいたま市に建設する 幸手工場は50億円を投資し、地上5階建て延べ17,466m2。新本社は地下1階地上5階建てで、投資額は約10億円。 工場は2014年3月稼働予定
しまむら(さいたま市) 同社最大規模の物流センターを東松山市に建設 敷地面積170,000m2、投資額約50億円 2015年度を目途
ちふれ化粧品(川越市) 生産能力増強のため、第2工場を建設 敷地面積42,100m2、工場延べ2,000m2、投資額約20億円 2013年秋
ららぽーと(富士見市) 三井不動産が富士見市役所北側に大型商業施設「三井ショッピングパークららぽーと」を建設 敷地面積170,000m2 2015年度開業
セキ薬品(杉戸町) 県西部地域に本格進出するため所沢市や秩父市などに14店舗を新規出店。店舗網の拡充に合わせて、本社や物流センターも移転する 本社建設費約5億円。 本社は2013年4月を目途
日建リース工業(東京都) 飯能市に整備工場を建設。同時に、上尾市と川越市に工場を集約しレンタル事業の拡大に備える 整備工場は約10haを借り上げて建設。投資額は約15億円。 2013年度稼働予定
Paltac(大阪市) 白岡西部産業団地内に物流センターの建設を計画 投資額約120億円 未定
JR東日本・さいたま市 浦和駅高架化に伴い、2013年度中に飲食店などを整備するほか、2014年度には西口に5階建ての駅ビルの建設を計画 敷地面積は8,600m2 2013年度一部開業
さいたまコープ(さいたま市) 春日部店を刷新開店 売場面積約2,000m2 2012年11月完成、オープン
片倉工業(東京都) JRさいたま新都心駅近くに新たなショッピングセンターの第2期開発計画を発表 地上4階建てで、売場面積は33,000m2、投資額約120億円 2015年春開業予定
ヤオコー(川越市)としまむら(さいたま市) 東松山市の大栄不動産などが開発を進める工業団地に、ヤオコーは惣菜工場、しまむらは物流拠点を建設 ヤオコーの敷地面積は33,000m2、しまむらは41,000m2 2013年4月稼働予定
丸広百貨店(川越市) JR川越駅前の「アトレマルヒロ」を専門店を中心とするショッピングセンターに改装 投資額約10億円 未定
カインズホーム(群馬県) さいたま市と都市再生機構が進めている「みそのウイングシティ」に出店を計画 敷地面積約4.4ha 未定

出所)マスコミ各社の記事から当研究所作成


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