一般社団法人埼玉県建設業協会

トピックス 2015年12月号

関東甲信越ブロック会議
品確法の趣旨徹底と
適正な予定価格求める

 平成27年度関東甲信越地方ブロック会議と地域懇談会が10月7日、東京大手町の経団連会館で開催された。全建側は、改正品確法の運用指針徹底と、担い手の確保・育成に向け公共事業予算を安定的・継続的に確保することが重要と主張。
 冒頭、挨拶の中で関東甲信越地方建設業協会の渡邉会長は、「地方建設業は公共投資の減少で厳しい経営が続いている。適正利潤が得られ、経営基盤を安定し雇用を続けられる環境が大事」と述べる一方、{適正利潤確保と処遇改善、コンプライアンス徹底など、担い手としての使命を自覚し、持続的に役割を果たしていくことが大切}と強調した。
国土交通省の谷脇土地・建設産業局長は、公共事業予算について「今年度の事業費が非常に少ないという指摘があることは承知している。将来を見通した経営ができることが、地域で役割を果たしてもらうための基礎的条件だ」と理解を示したほか、「社会保険の加入は、今が一番大事な時期で、当初目標をぜひ達成したい。担い手確保では資格を取得しやすくする仕組みや、入社時の研修に工夫が必要だろう」と各種取り組みについて見解を述べた。
 関ブロ会議に先立ち開かれた地域懇談会には星野副会長と原専務理事が出席、国土交通省から示された「建設産業の担い手の育成・確保とインフラの適切な品質確保」と、全建提案の「発注関係事務の運用に関する指針の徹底と、事業量の安定的かつ継続的な確保」をテーマに、業界、行政が取り組む対策について各都道府県協会と意見が交わされた。
 引き続き開催された関ブロ会議には、島田副会長、星野副会長、野中副会長が出席、7項目にわたる要望を行った後、野中副会長による決議文読み上げが行われ、すべて採択された。
要望事項は次のとおり

公共事業予算の安定的・持続的な確保について

 公共投資の下げ止まりにより、建設業の財務統計指標は一部改善が見られるものの、それまでの抑制政策の結果、内部留保の取り崩しや人員の削減などにより経営基盤は脆弱化をしており、特に地方の建設業者は、若手技術者や技能者など現場の担い手の確保・育成が厳しい状況にある。ついては、今年度大型補正予算の早期編成と、平成28年当初予算において、建設産業が長期的展望に立ち、企業の最大の財産である人材の確保・育成と品質確保に加え、災害対応に欠かせない設備の適切な更新につながるような公共事業予算の確保を強く要望する。

 回答:「25年度以降、公共投資の減額に歯止めがかかりほぼ横バイで推移しているが、経営基盤を安定させ担い手の確保を継続的に続けていくためには、中長期的な公共予算の確保は極めて重要と認識しており、28年度予算では前年度比1.16倍の予算要求を行った」

改正品確法の遵守徹底について

(1)工事発注準備段階において、予定価格の適正な設定、歩切りの根絶、発注時期と施工時期の一層の平準化をお願いしたい。また、工事施工段階における適切な設計変更をお願いしたい。

(2)規模の小さな市町村は発注体制が整っておらず、発注関係事務の適切な実施が懸念されているため、国の支援をお願いしたい。

(3)運用指針どおりに発注関係事務が今後適切に行われていくかが重要で、国におかれては定期的に効果検証を行い、その結果を公表していただきたい。

  回答:「品確法に則り、適正な利潤が確保されるよう取り組むとともに、受発注者が対等な立場で運用されるよう努めていく。歩切りの実施自治体は730から340に減ったが、残りについても理解を求めていく。平準化については、柔軟な繰越や債務負担行為などを実施している自治体もあり、拡大していきたい。発注体制の強化では全ての自治体が加わった組織整備を行ったほか、発注者支援本部を設置しサポートにあたることとしている。」

適切な工期設定と施工時期の平準化並びに若年労働者の雇用と女性技術者登用の促進について

(1)適切な工期設定と施工時期の平準化を図るため、「発注関係事務の運用に関する指針」の適正な運用に努められたい。

(2)若年労働者の増加を図る観点から、工期設定にあたっては週休2日制に配慮した余裕のある工期設定を行うとともに、それに伴う経費の増加にも配慮されたい。

(3)地方建設業界の実情を踏まえ、女性を採用し技術者として育成するためには相当の時間を要することを考慮したうえでモデル事業の拡大に努められたい。

  回答:「ゼロ国債の活用や、工期が12ヶ月未満の工事は単年度予算が原則であるが、2カ年度国債を活用するなど工夫をしながら平準化に努めていきたい。また、週休2日制、男女別トイレや更衣室設置などのモデル事業については試行中であるが、検証しながら拡大に努めていきたい」

予定価格の幅をもった設定について

 予定価格は「取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短などを考慮して適正に定めなければならない」とされているが、実例価格には幅があるため予定価格にも一定の幅をもたせるのが自然。我が国はデフレ経済の脱却を目指し、日本銀行では物価上昇率2%を目標としている今、予定価格には幅をもたせるべきと考える。

 回答:「予定価格は、実態調査の平均値、最頻値で設定している。応札動向を見ると価格に幅があるのも事実。内訳書でも官積算で設定している単価よりも高い価格や、安い価格で調達している場合がある。ただ、受注者が適正利潤を確保できるよう、発注者が予定価格を責任持って定めることが担い手3法の趣旨であり、きちんと予定価格を設定できるよう指導していくことが我々の役割と認識している」

低入札価格調査基準における「一般管理費など」の算入率の引き上げと上限の撤廃について

 低入札価格調査基準においては「一般管理費など」の算入率が平成25年に30%から55%に引き上げられたものの、直接工事費(95%)、共通仮設費(90%)、現場管理費(80%)に対しまだまだ低い。受注者の責務とされている技術的能力の向上や技術者、技能労働者の育成・確保などに努めるためにも「一般管理費など」の算入率を引き上げていただきたい。また、建築工事において調査基準計算式で上限枠が予定価格の90%と設定されているため、競争入札においてはその上限枠の価格を見極めながら応札せざるを得ない状況となっている。計算式がありながらその算出結果より低い額に抑え込むことがあり、ある意味で「歩切り」に通ずる問題を含んでいる。受注者の適正な利潤確保の観点から、上限枠の撤廃をお願いしたい。

 回答:「品質確保の観点から改正を行い、落札率などを注視しているが、今の所換える方針はない」
地域建設業を対象とする維持管理工事の確保と指名競争入札の拡大今後ますます必要性が見込まれる維持管理工事については、地域に密着した建設業者による施工が望ましいと考えられるため、継続的かつ安定的に工事を確保していただくとともに、発注にあたっては地域建設業を対象とした指名競争入札の拡大を図っていただきたい。

 回答:「総合評価方式の中で地域の貢献度を適切に評価し実施している。維持管理工事については、地元を熟知した企業が継続的に受注できるよう、複数年契約などを柔軟に活用しながら取り組んでいきたいと考えている」

小規模工事における予定価格の設定と限度額の拡大について

 施工合理化調査が主に直轄工事を対象に実施されているため、市町村などが発注する施工量が少ない小規模工事に適用した場合に、直接工事費ベースで積算額と実際にかかる費用に乖離が生じている。すべての工種において小規模施工歩掛を追加されるか、施工規模別の歩掛補正値を導入されたい。また、緊急を要する工事を効率的に進めるために限度額を500万円以上とするよう要望してきたが、随意契約の限度額は地方自治法で都道府県・指定都市は250万円と定められていることから、限度額拡大が可能となるよう地方自治法の改正をお願いしたい。

 回答:「小規模工事の歩掛については実態調査の中で見直しを進めているが、対象工事を増やし、これらの調査結果を反映していく。また、地方自治法で250万円が上限となっているが、緊急工事については金額の縛りはない」


平成27年度埼玉県優秀建設工事表彰式
会員企業17社が受賞

 埼玉県は11月10日午前11時から、知事公館において「平成27年度埼玉県優秀建設工事施工者表彰式」を開催した。
県では、26年度に完成した表彰対象工事731件の中から優秀賞11件と、特別奨励賞8工事を選定、上田知事からそれぞれ表彰状が手渡された。なお、受賞者19社のうち17社が当会員企業で、小沢道路は3年連続、島村工業は2年連続の受賞となった。  受賞者を代表して、秩父土建の伊藤 孝社長が「受賞を大きな契機として、さらに技術の研鑽に励み、より品質の高い工事を完成させるべく努力していきたい」と謝辞を述べた。
受賞者は次のとおり(会員企業のみ掲載)
【優秀賞】
土木部門
カタヤマ―芝川築堤工新橋下流工区河川工事
中原建設―国道122号ボックスカルバート修繕工
星野組―県道蓮田白岡久喜線自転車歩行者整備工事
伊田テクノス―深谷東松山線滑川陸強橋耐震補強工事
浅見建材一川越日高線栗坪工区交通安全工事
秩父土建―国道140号8号橋下部工事
島田建設工業―3・5・5新曽川口線辺島橋取付道路工事
小沢道路―権現堂3号公園整備工事
建築部門
古郡建設―東入間警察署庁舎新築工事
【特別奨励賞】
土木部門
田中工業―大久保浄水場PC浄水池ドームなど修繕工事
島村工業―行田東松山線築瀬橋耐震補強工事
斎藤組―国道140号8号橋下部工事
関東建設―国道254号舗装指定修繕工事
山口組―長瀞玉淀自然公園線栃谷工区整備工事
金子組―国道299号春日町工区バリアフリー安全対策工事
建築部門
小川工業―農業大学移転整備水田複合実習作業棟ほか新築工事
設備部門
丸電―東入間警察署庁舎新築電気設備工事


土木の日のイベント
「はたらくくるまの広場」開催
さいたま県土 近隣園児141人を招待

 さいたま県土整備事務所(吉田 学所長)は、土木の日のイベントとして「はたらくくるまの広場」(当協会さいたま支部協賛)を11月15日午前10時から、さいたま県土整備事務所中庭で開催、浦和つくし幼稚園児141人を招待した。
 同イベントは、建設業のイメージアップのほかに、手と手、指と指が触れ合う機会を通して、未来を担う子供たちに「建設業の大切さ、ものづくりの面白さ」を伝えることを目的に催されたもので、ちびっこたちは建設機械の実演見学や試乗をはじめ、建設機械の模型操作や砂場でトンネルづくりを体験するなど、建設業への理解を深めてもらうための各コーナーを楽しんだ。


県との意見交換会
「適正利潤確保」をめざし意見交わす

 受注環境の改善と適正利潤の確保を巡り、県担当部局との意見交換会が11月25日午前10時から、別所沼会館で開催された。県側からは、県土整備部、都市整備部、契約局の幹部ら14人が、当協会からは正副会長、支部長、常任顧問ら17人が出席のもと、当協会側から提出された5テーマを中心に意見を交わした。
 冒頭の公共事業予算関係では、金額などは明示しなかったものの、今年度から取り組んだ発注の平準化(第一四半期発注)により、県土整備部としては上半期の発注率が大幅に増加したことを踏まえ引き続き実施するとともに、改正品確法の遵守徹底に関しては、県内市町村の中で「歩切りの実施を認め、改善を明言しない自治体」が僅かであるが存在するため、あらゆる機会を捉え改正品確法の趣旨に理解を求めていく考えを示した。入札執行・契約事務関係の中では、県側は「設計金額により指名競争入札を採用するなど、地元企業の受注に配慮している」点を強調したが、「神奈川県では上限を1億5千万円とする「いのち貢献度指名競争入札」を実施している。一般競争入札の実施により管内業者も育ってきており、20〜30社も参加させるのは談合問題対応時代の名残りではないか」といった意見も出された。
 総合評価方式改善の中で、「総合評価における最低制限価格の採用」を求めたのに対し、「地方自治法により低入札価格のみしか認められていない」とし、価格による失格基準を採用しながら運用していく考えを示し理解を求めた。また、設計変更について①発注者側の責に伴う工事着手不可工事の一時停止②初設計が現場と不一致の場合の設計変更費用の支払い③工期延長に伴う一般管理費、現場管理費の適正な計上④三者会議の活用などを要望。これに対し県側は「制度が存在するので有効活用に努めるが、県職員の技術力アップも当然だが「設計・積算」がしっかりしていることが最も重要だ」とし、今後の課題として取り組む姿勢を示した。
 フリー討議では、「担い手の中長期的な育成・確保のための適正な利潤の確保」のための方策に意見を求めたのに対し、「発注者としては適切な予定価格の設定が大事と考える。若者が入職しない理由は、土・日の休み、社会保険の加入など職場環境の改善に取り組む必要がある」とした。

協会提案議題

1.公共事業予算の安定的、継続的な確保

①今年度の補正予算の早期編成と前年度を上回る平成28年度予算の確保②県における公共工事の上半期執行状況、平均落札率、今後の発注見通し③来年度の予算編成方針などについてご教示いただきたい。

2.改正品確定法の遵守徹底

 運用指針のうち、①予定価格の適正な設定②ダンピング受注の防止③「歩切り」の撤廃④工事発注時期及び施工時期の平準化、分散化⑤工事施工段階における適切な設計変更について⑥地域性、貢献・協力度などに考慮した「指名競争入札の活用」について、関係機関への徹底と指導をお願いしたい。また、歩切りの撤廃について県として今までどのように対応していて、今後どのように考えているか伺いたい。

3.入札執行・契約事務関連

 ①道路河川の地域維持管理工事は地域性、貢献性、協力性を加味した「指名競争入札」の一部復活
 ②「舗装指定修繕工事」において、結果として数多くの「くじ引き抽選」で落札者が決定している状況。「くじ引き」で決まることが無くなるよう必要な具体策を講じるべき。

4.総合評価方式の改善要望

 ①総合評価における最低制限価格制度の採用検討及び「見なし評価」について
 ②災害対応実績に対してインセンティブ評価【前年度要望継続】
 ③「難工事」指定及び実績評価のあり方について
 ④評価項目(CO2削減対策)の取扱いについて
 ⑤インターンシップの加点に関する見直しについて

5.その他

 ①当初設計②設計変更についての改善要望など。


4工事、5名を表彰
県企業局 平成27年度優秀施工業者等表彰式

 県企業局は11月26日午前10時から、「平成27年度埼玉県企業局優秀施工業者等表彰式」を知事公館で開き、26年度に完成した工事(推薦17工事)の中から施工管理、施工条件、施工技術に優れた4工事と5名の技術者を表彰した。
 当日は、来賓として埼玉建産連の古郡会長と当協会の真下会長が出席、「本日の受賞は常日頃取り組んでいる技術向上に対する熱意の賜。今後さらに技術の研鑚に努められ、公共工事の適正な施工と、安全安心で高品質な社会資本整備のためご精進をいただきますとともに、建設技術の向上と社業の発展、ならびに本県建設業の発展のため一層のご尽力を」と受賞者に対し賛辞を贈った。

受賞者は次の通り(敬称略)。

▽田中工業(監理技術者・石川光春)技術者のみ表彰
  大久保浄水場 西部系11号PC浄水池ドーム等修繕工事
▽菅土木(監理技術者・荒品 毅)
  水道整備事務所 戸田西部線その7工区送水管更新工事
▽島村工業(監理技術者・杉嵜 達也)
  水道整備事務所 大久保浄水場西部系12号PC浄水池耐震補強工事
▽星野組(監理技術者・高橋 秀和)
  水道整備事務所 西大輪その1工区送水管布設工事
▽躍進電気(監理技術者・矢嶋 美智雄)
  吉見浄水場 太陽光発電設備設置その2工事

平成27年度技術発表会開催
優れた技術14事例を発表

平成27年度技術発表会が11月30日午後1時から、大宮ソニックシティ・小ホールで開催され、土木工事6事例、建築工事6事例、埼玉県発表1事例、青経部会発表1事例の、合わせて14事例が紹介された。
 今年で17回目を迎えた発表会には国、県、市町村など公共工事発注機関の関係者をはじめ、各会員企業を合わせた約450人以上の参加者を前に、これまで培ってきた高度な技術力、施工力などが披露された。
 主催者の真下会長挨拶に続き、後援者の埼玉県県土整備部の西成秀幸副部長と、関東地方整備局の塩谷正広・大宮国道事務所副所長がそれぞれあいさつ、「担い手の確保・育成はもとより、後世に質の高い社会資本を残していく必要から、当技術発表会開催の意義がある」とし、品質確保のため一層の技術力向上を促した。
 発表会終了後懇親会が開かれ、席上、星野副会長より発表企業12社に対して表彰状と記念品が贈呈された。

発表事例

[土木部門]

▽島村工業 木橋における杉丸太橋脚の杭木打ち込み工の施工管理(島田橋災害復旧工事)
▽ユーディケー 場所打擁壁・函渠壁体のひび割れ発生の抑制(圏央道桶川インター改良工事)
▽島田建設工業 橋梁架換え工事における現場での通行車両と通行人の安全確保(辺島橋取付け道路工事)
▽中原建設 耐震補強工事に伴うコンクリートの品質(龍圦水門耐震補強工事)
▽昭和工業 非破壊検査を使用した道路標識点検(道路案内標識保守点検業務委託)
▽金杉建設 市街地での陸橋耐震補強工事に伴う地域負荷の低減(内谷陸橋補修・耐震補強工事)

[建築部門]

▽古郡建設 鉄骨とRCの複合構造施工(深谷上柴保育園新築工事)
▽吾妻工業 既存片持梁切断に伴う既存バルコニーの沈下防止対策(中央区役所別館耐震補強工事)
▽初雁興業 さまざまな施工における検証(JAいるま野本店建設工事)
▽平岩建設 既存高校改築工事における生徒の動線確保(狭山ヶ丘学園新2号館・体育館改築工事)
▽真下建設 SMIC(スミック)工法の導入による耐震補強工事(蓮田市中央公民館耐震補強工事)
▽小川工業 外壁に大谷石を使用するための工夫(足利銀行行田支店新築工事)

特別参加

▽埼玉県営繕
工事事務所
県産木材の積極的利用(農業大学校建設工事センターゾーン)
▽埼玉県建設業協会
青年経営者部会
外国人技能実習生の活用事例と実態(人材育成、新興国への技術支援)

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