一般社団法人埼玉県建設業協会

経済一口メモ 2013年5月号

賃上げに慎重な県内企業

 今年の春闘は、久々に明るい話題が多かったが、景気の良い話は輸出関連の自動車や電機産業、コンビニなどの小売の業種が中心で、昨秋来の“アベノミクス”効果が表れた格好だ。しかしその景気の良い話は、埼玉県内の中小企業まではもう少し時間が掛かるようで、当研究所が実施した春季賃上げ見通しのアンケート調査では、3割の企業が賃上げの実施を決めかねていた。5月になった今では、既に新給与が適用されている企業も多いことだろうが、参考までに今春の賃上げ状況を紹介したい。
 調査は県内の中小企業を中心とする575社へアンケート、258社から回答(回答率44.9%)を得た。賃上げ実施状況によると、調査時点では定昇やベースアップに限らず、賃上げを予定していた企業割合は、全産業で46.2%と半数に満たないでいる。一方で、今年は賃上げを行わないと回答した企業割合は16.7%で、賃上げを実施するかどうか「未定」と回答した企業は31.8%と3割を超していた。
 ここ数年の春闘では、景気の停滞から賃上げを実施しても、定昇のみという企業がほとんどだった。しかし、今春闘では、久しぶりにベースアップまで踏み込んだ企業もあり、県内企業でもこの両方を実施する企業が増えたのかと期待したが、結果は相変わらず定昇のみの賃上げ企業が多数を占めていた。4割強の賃上げ実施予定企業から、定昇とベースアップの取組状況を聞いたところ、定昇のみ実施してベースアップは実施しない企業の割合が31.8%と最も多く、その両方を実施すると回答した企業は、わずか10.1%となっている。景気回復に対する期待が高まっているにもかかわらず、賃上げでは相変わらず定昇のみの支給が中心で、多くの企業経営者ではベースアップを含めた賃上げには、慎重な姿勢を崩していないようだ。
   賃上げで気になるのが前年に比べての増減金額で、実施予定企業に聞いた結果では、半数を超す50.6%の企業が「前年度横ばい見通し」と答えた。「前年度比増加見通し」企業は全体の21.6%で、今春も例年通り厳しい支給方針で臨む経営者の姿がうかがえる。しかし、一人当たり平均予定額は、加重平均で5,114円と、前年度実績支額に比べ230円上回った。
 今春の賃上げ調査では、円高是正が進み、株価の上昇基調が続くなど、景気回復の期待が高まっていただけに、県内企業の賃上げも良い結果がえら得ると思っていた。しかし、今回の調査結果から察すると、企業経営者の判断は、アベノミクス効果が自社の業績に、どの程度影響するのかをもうしばらく見定めてから、という心理が働いたようだ。(ぶぎん地域経済研究所)

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