一般社団法人埼玉県建設業協会

経済一口メモ 2013年10月号

オリンピック招致で長い低迷期に終止符が

 注目されていた2020年の夏季オリンピックと、パラリンピックの開催地が東京に決まった。復活の兆しを見せ始めた日本経済にとって、この五輪招致は願ってもない大イベントであり、その経済効果は3兆円とも4兆円とも言われ、中には150兆円という途方もない試算まで世に溢れている。安倍政権が進めてきた経済対策にも好影響を与えることは確かで、五輪効果が第3の矢に止まらず、第4の矢になった、との表現も出てきた。確かに、開催までには7年という時間があり、その期間は様々な分野で五輪効果が寄与していくだろう。
 とりわけ嬉しいことは、バブルの崩壊以後、失われた10年あるいは20年という長い年月の中で、苦境を強いられていた建設業界にとって、東京を中心とした都市基盤の整備をはじめとする土木・建築工事の需要が継続することだ。埼玉県には直接的大きな五輪効果はあまり期待できないが、それでも地元建設業者にとっては受注機会の増大につながる。直近の埼玉県内経済をみると、五輪招致が決定する以前から経営者の業況感は着実に持ち直していることが見て取れ、今回の招致決定でさらに弾みがついて、これまでにない建設需要が期待できそうだ。
 その県内企業の業況感だが、当研究所の2013年7−9月期経営動向調査によると、良いから悪いを差し引いた数値を示すBSIがマイナス12に縮まり、前期4−6月期から7㌽改善している。2013年1−3月期のBSIがマイナス31だったことからすると、半減以上の改善ぶりで目をみはるばかりだ。先行き10−12月期もさらに改善する見込みで、BSIはプラスの1へと水面下から浮上、長く暗いトンネルから脱出する光が見え始めている。
 BSIが改善しているのは、販売や受注の数量が回復していることが経常利益に寄与し、数量が増加していることで、設備の過剰感も薄らいできたことが要因として挙げられる。中でも製造業では、素材型の鉄鋼・非鉄金属や加工組立型の電気・情報通信機械器具などで生産量が増加。非製造業では住宅建設や不動産の業種で、年初からの活発な住宅着工を背景に、受注量の増加がみられていることで、業況感の改善に至っている。
 このまま販売量や受注量が好調に推移すれば、先行き10−12月期のBSIプラス1は、次回の調査でさらにプラス幅が拡大することも十分に予想され、ひいては企業の設備投資にも好影響を及ぼすことになり、建設業界はオリンピックの東京招致を境として、長かった低迷期にようやく終止符が打たれることになろう。(ぶぎん地域経済研究所)

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